五話 普通じゃないスライム討伐
なんだかんだで立ち直った直人は、ミーヤと一緒にクエストの張り出し板の前でクエストを探していた。
「直人!難しいクエストはやめてくださいね!」
「わかってるって!(知るかぼけ!一回しかパーティ組まないんだから難しいのやるに決まってんだろ!)俺、ミーヤを女の子を危険な目に遭わせたくないんだよ!」
言ってることと思っていることが矛盾している直人の言葉‘をミーヤは真に受ける
「直人!たまにはいいところあるじゃ……って!難易度Bクラスじゃないですか!」
ミーヤは直人が受付のお姉さんに渡したクエストの紙を見てそう叫ぶ。すると、受付のお姉さんがクエストの説明を始める。
「このクエストは急激強くなった弱いはずのモンスターの調査依頼です!この前C級のパーティが失敗したので難易度をBクラスに引き上げました」
「待ってくれお姉さん!C級とかBクラスとか意味分かんないだけど。でも俺はお姉さんのことはもっと知りたいと思っているから今夜一緒に——」
「私が説明しましょう!クエストにはそれぞれ難易度があって、Bクラスは——」
ナンパを邪魔された直人は不機嫌そうにハエを追い払う様に手をヒラヒラさせる。
「はいはい、すごーい!よくできまちたねぇー。えらいでちゅねー」
煽られたミーヤは口を『プクーッ』と膨らませ直人を睨む。この馬鹿みたいなやりとりを見た受付のお姉さんは口元をニヤリとさせて提案した。
「受けてみてもいいかもしれませんよ!あなた達2人ならクリア出来そうですもの!」
そう言って、あざとく直人の手を取り顔を近づける。
「出来ますよね?期待してます!」
「いやぁ!そこまで言われたら仕方ないですねぇ!」
直人は右手を頭の後ろに当て、まんまと調子に乗せられる。そして、受付のお姉さんはミーヤの手を取る。
「あなたような魅力的で美しい女性のカッコいい姿を是非見てみたいです!」
「いやぁー、魅力的だなんて!あなたわかってますね!」
こちらも同様に調子に乗せられる。そして、直人とミーヤは声を揃えて言った。
「「よし!行くか!」」
その横で、受付のお姉さんが2人に聞こえないようにボソッと呟いた。
「受付料金ゲットぉー」
そして、2人は受付料金を払いクエストの内容である調査先へと歩いた。
「おいミーヤ!その弱いはずのモンスターってなんだよ!」
「スライムですね。本当は子供でも倒せるモンスターなのですが、このクエストによると凶暴化してるらしいんですよ」
「なるほど。で、俺はどう戦えばいいんだ?」
直人は純粋な疑問をミーヤに投げかける。するとミーヤは焦り出した。
「えっ⁉︎武器も持ってないのにクエスト受けたんですか?バカですか?いや、すみません!バカだったことを私が忘れてただけでした」
「おい!俺は絶対、誰が見ても、何をしても、バカには見られない!」
「あの人、バカよ!」
直人が自信満々にバカじゃないと否定してすぐに、街の人から罵られる。
それに気づいた直人は、あることを思いついた。
「ちっ、どいつもこいつも俺をバカ扱いしやがって!……いや待てよ!俺が武器なしでこのクエストをクリアしたら、俺をバカと言う奴はいなくなるんじゃないか?よし、コレだ!コレで俺はバカじゃなくなる‼︎」
そう言いながら空に向かって拳を突き上げる直人を見たミーヤは、『やれやれ』と呆れたようにため息をつく。
「その発想がバカってことに気がつかない時点でバカですよ」
直人は自分の思い付いたことを自分で天才と思い込み、ミーヤの言葉も聞かずに騒ぎながら突っ走っていった。
取り残されたミーヤは街の人々に『バカですみません』とお辞儀をして直人のあとを追っかけた。
クエストの目的地に——大きな泥沼がある湿地帯——直人達はたどり着いていた。
「出てこい!雑魚がちょっと強くなったぐらいで調子に乗ったスライム!」
「私の魔ほ——いや、剣で断ち切ってやりますよ!」
たどり着くなり挑発を始める2人には、ある作戦があった。その内容は、
『直人!スライムは柔らかい分物理攻撃があまり効かないので、私が魔法で攻撃をします』
『じゃ、その装備俺によこせよ!』
『ちゃんと聞いてください!私が魔法の射程距離を縮め、一撃に集中して魔力を全て使うので、その魔法を当てるために直人は私のところにスライムを引きつけてください!』
『わかった!なら俺が掛け声をした時に魔法を打ってくれ!……ニヤッ』
『わかりました!任せましたよ』
この作戦はミーヤがクエストを受けてすぐに提案した作戦で、直人は少し怪しいが珍しく素直に引き受けたのだ。
そして、ちょうど2人の挑発に乗るかのようにスライムは姿を表した。大きな泥沼を挟んだ向かい佇むスライムを見て直人は、
「何あれ⁉︎オナ○じゃん‼︎デカめの」
爆弾とも言える発言をする。それを聞いた下ネタに耐性のないミーヤは赤面して両手で顔を抑える。顔を抑えながらも指の隙間からちゃんと見るという、あるあるなこともしている。
「あれが、オナ……じゃなくて、凶暴化したスライムですか?」
そのスライムの全貌は、直人の発言を否定できないくらいにオナ○に似ている。デカめだけど。そのスライムの体の中の空洞内に紙切れのようなものがチラついているが、それに2人はまだ気づいていない。
「よし!ミーヤ!作戦開始だ!失敗するなよ!したらご飯奢りな!」
「……はっ⁉︎、いいでしょう!ですが、私はそんなマヌケなことするわけないですよ」
意気込みつつ煽る直人の言葉にミーヤはやる気になる。直人は何かよからぬことを考えているのか、口元をニヤリとさせる。
「うぉぉぉぉ!!!」
直人は気合を入れて叫びながらスライムの元へ駆け出す。その間、ミーヤは目を瞑りながら詠唱を始める。そして、直人はスライム元へたどり着くと、
「お尻、ぺんぺーんだ!」
ズボンとパンツを下げてお尻を出して挑発する。それだけでなく、『ブぅぅぅぅ!』とどでかい音を立てて屁をこき、その場から逃げる。もちろんズボンとパンツを下ろしたまま。
流石にバカにされていると悟ったスライムは、逃げた直人を全力で追いかける。
「うわぁぁぁ!!助けてぇぇぇ!!」
追いかけられていることに気がついた直人は、必死に大きな泥沼の周りを下半身裸で走る。
そして、ミーヤの近くまで来た直人が『ミーヤ‼︎』と作戦の掛け声をかけると、ちょうど、詠唱を終えたミーヤが目を開けて前を見る。すると、
「きゃぁぁぁぁ!!!変態!!」
下半身裸で向かってくる直人を見てミーヤは絶叫する。そして、我を失ったミーヤは唱えた魔法を直人に直撃させて気を失った。
「うぉぉぉあぁぁ!!」
魔法が直撃した直人は思いっきり後ろに吹っ飛び、スライムの体の中に押し込まれて中の空洞に入った。
ゴキブリ並みの生命力の直人はまだ気を保っていた。
「いってぇ!ってかここオナ○の中じゃん!まさか体全部をオナ○の中に収めることになるなんて思いもしなかったわ……ってあれ?」
スライムのジェルまみれになりながらも直人は、空洞内にある1ページのお
「これって………」
その1ページの紙切れは、直人にとってかけがえのないものであり、この世界にくる原因とも言えるもののカケラだった。
「俺が買ったエロ本じゃん‼︎」
そう、その紙切れは直人が転生前に買っていたエロ本『今夜は特別に♡』にあった1ページだった。直人は溢れる涙きれず男泣きをする。
そして、直人はスライムにくっついているエロ本の1ページを剥ぎ取った。
——瞬間、スライムは黒い霧と共に元の大きさに戻り、直人はスライムの中から出ることが出来た。
「俺の!エロ!ほぉぉぉぉぉん!!!」
直人は目から涙を流してながらも、嬉しさのあまり空にちぎれたエロ本のページを掲げてそう叫ぶ。
そう、彼は下半身裸でスライムのジェルまみれになりながらエロ本の切れ端を空に掲げて叫んでいるのだ。
コレは彼のエロ本への熱意を証明するとともに、討伐前にバカじゃないことを証明すると言った彼の有言実行を意味することになる。
直人は、バカじゃないことを証明出来た。しかし、同時に変態ということも証明したのだ。
いや、やはりバカなのかもしれない……。
俺のお宝が異世界の敵を強くした⁉︎ならばそれを取り戻すまで 尾単 小茄子 @ryutakesi
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