last egg
よく
颯大の肩には、尚の
隣を歩く尚は、待ち合わせをした
尚いわく、トートバッグの中には
颯大は
いつものスーツ姿と違う、
彼の茶色がかった柔らかい髪が、
颯大より狭い
颯大は尚の
歩いていたはずの尚が、駆け出した。
釣られて颯大が駆け足で
先ほどの白い柵から続く
尚が
門の
「尚! 入って入って」
「お
尚は門を開けると、颯大の手を引いて中に入っていった。
奥さんは、尚の
通されたリビングには、パステルーカラーの愛らしい
正面にある大きな
この家の夫婦の子どもで
リビングには、先ほどとは
彼らの
それから、キッチンにもう一組。
こちらはゲイカップルで、尚の
今日
イースター
先ほどこの家に来る
今朝
颯大の大好物の人参が使われたスポンジ
その見た目の
ケーキを食べるその前に、エッグハントが始まった。
実は子どもたちが食事をしている
エッグハントとは、子どもたちがその隠したエッグを見つけるというイベントの一つ。
子どもたちは庭先で、エッグを
大人たちは大窓を開けたリビングで、その
いつしか話は、尚の
尚は温厚で可愛い見た目でありながらも、好きなものには
その中の誰かが「お菓子が
颯大は次第に、尚のその
お菓子作りは誰にでもできるものでもないし、その
ゲイカップルの一人が、尚に言う。
「幸せそうで、安心したよ」
尚は笑顔で相槌を打ってはいるけれど、どことなく引きつっても見えた。
尚が
颯大は胸が
「……幸せなのは、俺の方ですよ」
気づいた時には、颯大はそう言っていた。
尚は颯大へ顔を向けると、申し訳なさそうな表情を見せている。
颯大は
「好きな子が、好きなものを作ってくれる。こんな奇跡、ないでしょう?」
その時、颯大は尚が言っていた言葉を思い出した。
『好きなものが一つだったなんて、奇跡が起きました!』
あれはそういう意味だったのかと、颯大は理解した。
尚にとっては『「(人である)羽崎颯大」と「兎」』なのだろう。
けれど、颯大にとってもイコールになった。
『「大上尚」』と「人参(のお菓子を作れること)」』、この二つが一つという、奇跡。
庭先で、子どもたちの声が聞こえた。
『ねえ、ぱぱ? ひとちゅ、ないよ?』
『ひとっ、なぁよ』
『ないない』
『ないでしゅ』
大人の一人が庭先へ向けて「大丈夫、見つかるよ」と声を掛けた。
声に釣られて庭を見た颯大の目には、残りの一つであるエッグが見える。
正面右にある大人ほどある
颯大は思い立った。隣に座っている尚に小声で囁く。
「大上、フォローを
颯大はトイレを借りるフリをして家主に声を掛けると、リビングを出て一人、玄関を出た。
玄関先から柵の内側に
颯大は
四肢を使って庭へと行く。
庭では、子どもたちが皆、未だ残り一つのエッグを探していた。
颯大は子どもたちが背を向けている
前足を小刻みに使ってエッグを
鼻で
「あ! うしゃぎしゃん!」
その子が兎の颯大を撫でていると、後ろから一人また一人と子どもが集まった。
子どもが発した初めの一言で、驚いた大人が駆け寄る。
「えっ? ええっ? なんで?
颯大の
颯大が子どもたちに
「あっ! ええっと、それ、僕のウサギ!」
尚が駆け寄ってきて、
「ほっ、ほら、今日はイースターだからね。ウチから
そうしてコトを
それを見て、その場にいた大人も子どもも
尚は混乱していたのか「キャリーに戻してくるね」と、颯大を抱えて家の中へと入る。
尚はリビングを通り抜けて、足音を抑えて玄関を出た。
颯大を
「
そのあと再び変化した颯大は、何もなかったかのようにして人型でリビングに戻った。
「
颯大は悪い気はしなかった。むしろ、
不意に、尚が颯大に問いかけた。
「っていうか、……さっきのキスは、なんですか?」
颯大は思わず笑みが零れた。
「好きっていう意味かな?」
途端に
颯大は再び、いや、人型としては初めて、尚の頬に口づけた。
イースターハニー 水無 月 @mizunashitsuki
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