egg 2
己の身に、何が起きたのか。
こともあろうに、人兎の存在を
体の
その間にも、颯大が
「羽崎さーん! はわぁ、
出る訳ないだろう、と颯大の
颯大の目に
「羽崎さーん? ウサギちゃ……じゃなくて、羽崎さん!」
尚は目の前に存在している白い兎を『羽崎さん』と
けれど、彼の様子はどことなく楽しんでいるように思えてならない。
(誰が出て行くか!)
颯大は
「羽崎さん。とりあえず
どちらにせよ、このままという訳にはいかない。
颯大は
途端に、尚が颯大の体を掴む。彼は颯大の
随分と歩いているみたいだった。
エレベーターにも乗ったような気がする。
しばらくして、扉の開く
「羽崎さん、スーツと
声のする
「僕、
尚はネクタイをシャツの上に
「……
颯大はテーブルらしきところから
「
尚に後ろを向くように
「羽崎さんは、人兎なんですか?」
颯大は椅子に腰掛けて、靴下を履きながら愛想なく言う。
「もうこっち向いていいぞ。
尚からの問いには、颯大は答えなかった。
こちらへと向き戻った尚は、鼻息を荒げている。
「羽崎さんは、噂に聞く『人兎』だったんですね!」
尚の様子は興奮にも
「僕、お、お
大上尚という人間は、どうやら頭のネジがどこか緩んでいるか、もしくは抜けている子らしい。
けれどこの大上尚という
「あのさ、大上。
颯大が
(どうする。大上とはいえ、人間に俺が人兎と知られてた……)
その時、尚が小さく呟いた。
「どうしよう、僕……、
尚は
とりあえず尚のその恐怖を拭おうと、颯大は声を掛けた。
「ああ、ええっと、
人兎は
すると、尚が顔を上げて言葉を続けた。
「好きなものが一つだったなんて、
なんだ? どうした? と颯大の中では
「あ、すみません。こっちの話です」
尚はそう言って
颯大が
「誰にも言わないので、
なぜか
「ああ、ありがとう」
颯大の
* * *
ありがとう。とは言ったものの、颯大は
大上尚という人間は、
けれどまた彼の時みたく、人間の前で兎に戻ったとしたら、その時自分はどうなるのだろうか。
そんな
パウンドケーキにマフィン、ムースの乗ったゼリーにレアチーズケーキ、ドーナツにクッキー、加えてスコーンや
尚のそのレパートリーに、颯大もこの
「羽崎さんはドワーフホトですね。僕の
尚に
正直、颯大は尚との
だから
尚は颯大の兎尻に顔を
颯大も何を気を
恍惚とした尚の小さな溜め息が、颯大の
「ふぁ~~」
元が兎とはいえ、人型の
(……あれ? もしかしなくても俺、
そんな
むしろ、
だけど、今日は尚の様子がおかしい。
いつものように会議室の床に並んで
ワッフルを食べている人型の颯大をも尚は
颯大はどことなく
「どうかしたのか?」
尚は浮かない顔をしたまま大きく溜め息を一つ。
「僕って、羽崎さんが好きじゃないですか」
「だからパートナーがいない僕だけ、友だちとのイースターに一人で
再び尚は大きく溜め息を吐くと、何ごともなかったかのように手元を動かしては、卵のカプセルに
けれど、すぐさまその手が止まった。
尚はなぜか笑みを浮かべて颯大を見る。
「な、何?」
颯大は先ほどの彼からの
何かを
「羽崎さん、
尚が
けれどなぜか、颯大は尚の潤む瞳に
「羽崎さん?」
その
「えっ? ……ああ、俺は遠慮しておくよ」
颯大は訳も分からないまま
「……食べましたよね」
颯大が視線を戻すと、尚は顔を
「……食べましたよね?
尚が顔を上げると、彼の瞳はさらに潤みを
その
「一緒に行ってくれますよね?」
そう尚にトドメを
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