第三話  ~何者~

 その少女は、坂下凛という少女だった。

 少女は、フェンスに近づいて屋上から景色をながめる。


 「…坂下さんはいつからここにいるんだ。」

 「坂下さんじゃなく、凛でいいよ。私もあなたのこと名前で呼ぶから。あなたの名前はなんていうの?」

 「俺は死神だ。」

 「死神…?」


 凛はこちらをかえり、少しおどろいた顔をしていた。いきなり死神と言われれば誰だって驚くにきまってる。当然とうぜんだ。俺が人間だったとして、いきなり死神だと言われたら驚く。しかし、凛は死神と言った俺に興味きょうみを持ったのか驚いたのは一瞬いっしゅんだった。


 「ははは、すごい名前。」

 「おい、笑うな。」

 「ごめんごめん。だって、私が予想してた名前よりすごい名前だったからさ。それにちょっとカッコつけた感じでその名前言ったから思わず笑っちゃった。」

 「俺はカッコつけて自分の名前を言ってないぞ。」

 「えー。言ってたよ。」


 楽しそうに凛は答えた。

 目の前に死神がいるというのに明るいやつだ。普通ふつうのやつなら死神と言われたら怖がるやつがほとんどだけど、こいつは怖がらなかった。


 「お前、俺が怖くないのか。」

 「お前じゃなくてりんだよ。」


 お前呼びしたのを凛に注意ちゅういされてしまった。こいつ意外とめんどくさいかもしれない。


 「…凛は俺のことがこわくないのか。」

 「うーん。別に怖いとは思ってないよ。今もこうして会話してるし。最初、死神って言われた時はビックリしたけどね。」

 「そうか…。」

 

 あっさり怖くないと言われてしまった。まぁ、お化けじゃないんだし俺自身が怖くある必要もないけど。


 「もしかして怖がってほしかったの?今からでも怖がってあげようか?えー!あなた死神なの⁉めっちゃこわーい。」

 「あおってるだろ。」

 「そんなことないよ。」

 「そうにしか聞こえねーんだよ。ただ、俺のことを死神だと知って怖がらないやつがめずらしいってだけだ。」

 「そうなの?死神そんな怖そうに見えないけどね。」

 「余計なお世話おせわだ。」


 怖がってほしいと思われたのか、凛にわざとらしく怖がられた。完全に煽ってるようにしか聞こえなかったけど。

 くそ。なぜか、会ったばかりのこいつにずっとからかわれてる。こいつは相変わらず楽しそうな表情をかべている。


 「おま…、凛といると調子がくるう。」

 「そう?私はひさしぶりに誰かとこんなに話せてうれしいけどなー。」

 「話し相手ならこの病院にいっぱいいるだろう。」


 今まで話してきて、こいつの性格だと病院内で友達が普通にいるようなな感じだが、意外とそうでもないのだろうか。いや、会ったばかりの死神と平然と会話できるやつだぞ。ありえないだろ。同年代の子は病院内で少ないと思うが、話し相手ぐらいいるだろと思ってしまった。こいつのことだし、またからかってる可能性もあるが。


 「わかんないよ。案外あんがい、私人見知りかもしれないよ。」

 「もし、そうだったら驚きだな。」


 俺はそう言って、とびらの方を見てここから帰ろうとする。


 「あれ?死神もう行っちゃうの?」

 「俺もそんなにひまじゃないんでな。」

 「そっか。明日も私ここに来るから、また話そうよ。死神と話すの楽しい

し。」

 「考えとく。」

 「絶対ぜったいきてよ。絶対!」


 帰る俺に凛は、手を振りながら何度も声をかけた。俺はそれにあまり反応せず屋上の扉を開け、屋上を後にした。

 薬の効果はもう一度薬を飲まないと消えないため、病院のトイレを探し、周りに誰もいないことを確認するとトイレに入って薬を飲んだ。やはり苦い。そして誰にも見えるようになった俺は、病院を出る。


 「何なんだあの女は…。」


 歩きながらあいつについて考えていた。

 死神と知っても、俺を怖がらず、怖がるどころかさらに楽しそうな表情をしていた。あんなやつは初めてだ。

 結局、凛が何者か分からず、〈?〉についての情報も得られなかった。ただ、あいつにからかわれただけになってしまった。


 「やめやめ。あんなやつのことを考えるなんてどうかしてる。」

 

 あいつは俺のことが見えた。それでいい。数字が〈?〉かどうかなんて関係ない。見えたということはそう長くない間に死ぬという事だ。


 「………。」


 それでいいはずなんだ…。

 そんなことを思いながら、俺はあゆみを進める。

 

 




 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 


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死神は余命「?日」の私に嘘をつく 猫NEKO @NEKO_gamisama

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