啓示
平 一
啓示
信じられないかも知れないが、
私は政治家になってからも、
趣味の魔術に傾倒していた。
魔王アモンを
衣装も翼も光輪も、全てが白く光り輝く、
美しい少女の姿をした天使だった。
そこで私は彼女から、
不当に遇されている我国の優秀性と、
世界を支配する運命についての啓示を受けた。
その後私は、人々を扇動し、
邪魔になる者達を弾圧し、
戦火も
……そして私は今、
爆撃で崩れた政庁の中で重傷を負い、
死に
そこへ、天使が再び下りてきた。
ただし当時と異なって、
その輪も翼も舞い散る羽根も、
鮮血のように赤かった。
『ごめんなさい……実は私は貴方ではなく、
人類全体のためにこの戦争を始めさせたの。
あってはならない〝戦争の効用〟って、
ご存知でした?
それはもう本当に、驚くほど沢山、
良いことがあるのよ』
『工業・情報・AI技術といった、
科学・技術の発達。
政治体制から行政、民事法制にまで及ぶ、
制度・政策の改革。
経済・社会活動の統合・活性化や、
格差の縮小、犯罪抑止。
国土条件や国民の水準、国際関係など、
国家を取り巻く自然・社会環境の再認識と、
それに対する改善や適応。
生活や産業、輸送、通信のための
物的資源の建設・備蓄や更新。
そして何より重要なのが、貴方のような独裁者や、
それを生み出す腐敗、衆愚、無責任、粗暴者など、
人的資源の
もはや声も出せなくなっていた私は、
心の中で絶叫した。
(なぜだ! そんなことならなぜそれを、
最初から教えてくれなかったんだ!)
……そこで私は、目が覚めた。
私は急いで、部屋を出た。
昨夜の儀式に使った部屋を見ると、
床にはまだ、魔法陣が残っていた。
そしてようやく、
儀式では何も起きなかったことを思い出した。
彼女は一体何だったのか?
天使か悪魔か、ただの悪夢か?
今後も分からないかもしれない。
だが重要なのは、その言葉の内容だ。
私は色々と考えた末、
将来必要になると思って書いた
周辺国への宣戦布告の草案を、
そして、戦争によらずとも国家発展を
実現できる手段を思い浮かべてみた。
先進技術の開発・普及や産業振興、社会保障、
人々の保健・教育や国際・国内協力……。
とにかく私は、あらゆる平和的方策を
検討し直すことにした。
アモン:
ソロモン王が使役した、72大悪魔の中の
過去と未来の知識を教え、人間同士の不和を招いたり、
和解させたりする能力がある。
啓示 平 一 @tairahajime
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
文明のヒミツ!/平 一
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 6話
文明のひみつ/平 一
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 4話
AI文明論/平 一
★6 エッセイ・ノンフィクション 完結済 6話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます