55話 【ハッピーエンド】ルートへ。

「助けて!お兄ちゃん…!」


「残念だったな?目の前にいるのがお兄ちゃんじゃなくて!」


男がレ〇プをしようとしたその瞬間まで、音楽プレイヤーで音声を録音し、俺は飛び出した。


俺は男の股間を思い切り蹴り飛ばした。男はその衝撃で後方に吹っ飛ぶ。そして、痛みに悶だした。


「咲来楽!俺のスマホで警察に連絡しろ!俺はあの男を抑える!」


「う、うん!」


咲来楽にそう言い、俺はスマホを渡す。咲来楽が電話をかけたのを確認すると、走って男の股間をもう一度、抑える手ごと蹴る。


そして、もう一度悶えるかと思いきや、男は白目を向いて、なんと口から泡を吹き始めた。


…あれ?僕、もしかしてヤッちゃいました…?


とりあえず、演技かもしれないので、抑え込む手を掴みながら。


そして、間もなく警察がつき、男は逮捕された。………が、俺は急所を過剰殺戮オーバーキルしすぎたため、軽いお説教を食らった。


でも、本当なら咲来楽が死んでいたんだ。お説教程度で済むならいいか。


…しかし、問題はここから発生した。


俺が帰宅すると、俺より先に帰っていた咲来楽と亜希菜達が俺を何故か拘束し、リビングまで連れて行かれる。


「な、なんだよ!?俺何かしたか!?」


嫌な静寂がリビングを支配する。


まったく身に覚えがなく、何をしたかも検討がつかない。


すると、亜希菜が嫌な静寂を破り話し始める。


「勇気君…私達に何か隠し事してないかな?…かな?」


おいおい…そんな、『圭〇君、レ〇に隠し事してないかな?かな?』風に言われてもな…


「してないよ、嘘も隠し事も…」


俺には乗るしか、選択肢がねぇだろが…


「…嘘だよね?」


「どうして嘘だって思うんだ?」


そこで、美春に切り替わった。


「…『9/24』、ドンキ○ーテ前で車の衝突事故が起こった。…ちょうど、私達が行ってたら、帰るタイミングね。それをまるであなたは、私達を止めた。」


俺は表情こそ、ポーカーフェイスでクールに保っているが、実際はやばい…


てか、なんでこいつらそんなに勘がいいんだよ…


「偶然だ。あの時は何かある気がして、止めた。嫌な予感って奴だ。」


「へぇ…嫌な予感、ね…じゃあ…テレビで死傷者ゼロって言ったとき、安心したように、『よかった』って言ってたわよね?まるで誰かが死んでない事に安堵したみたいに。」


「気のせいじゃないか?」


…くそ、やばい…完全に追いつめられ始めているぞ…このままだと、俺が過去から戻ってきたことタイム・リープしてきたのがバレてしまうのも時間の問題だ。


そこで俺は一つの疑問が思い浮かぶ。


…いや、逆になんで俺は話そうとしないんだ?もう、すべて終わった今なら、亜希菜達に話してもいいんじゃないか?


─いや、ダメだ。


そう思った自分をすぐに否定する。今話してしまったら、それは改変した未来を更に変えてしまう事になるかもしれない。


つまり、それは助かった3人が“また”何らかの形で死んでしまう事に繋がり…


俺がここに戻ってきた意味はなくなる。一度きりのチャンスがすべて水の泡になる。


しかし、次の亜希菜と咲来楽の一言で、俺は完全に詰んでしまう。


「じゃあ、なんで今日、帰るときに、『最愛の彼女を助けに行く』なんて言って走り出したの?」


「私があの廃墟に連れ込まれた時に、なんで?」


「………………」


詰み─


完全なるチェックメイトだ。


俺はもう、話さなくてはいけないのかもしれない。…ああ、そうか。未来が変わるのなら、俺がまた変えればいい。その未来が自分にとって不都合なら。


俺の心の中の誰かに無理だと、諦めろと言ってくる。


無理だと分かっている。だけど、こんな事が…今俺はみんなののおかげでここにいる。


そう─


あの時。5年後、自殺しようとした時、彼女達が、俺を想い続けたおかげで俺は過去に戻ってくることが出来た。だったら…彼女達に言ってもいいのではないか。


考えて、考えて…その先でたどり着いた答えは…


俺は意を決して、口を開いた。


「─さて、話をしよう。俺にとっては5の出来事だが、お前らにとっては先月から今日にかけての出来事だ。」


そうして、俺は語りだす。、9/24に、美春は死んだこと。


、今日、咲来楽はそのまま強姦されて殺されて、駆けつけた俺に山田は殺されて、俺は逮捕されたこと。


出所したが、亜希菜が俺がいないストレスにより、ガンと若年性認知症になって、すぐに亡くなったこと。


そして、俺が自殺しようとして、学校の屋上に行くと、亜希菜達が自分達の想いを俺に伝えたこと。


そのまま、落ちて、死んだかと思ったら、神様らしき人に過去に戻らせてもらったこと。


それらすべてを3人に話した。


「これが、あの日─9/24から起こったすべての出来事だ。」


3人は黙ったままだった。それもそうだろう。いきなり、中二病みたいなことを言われたのだ。仕方がない。


「となると、辻褄は合うわね。」


どうやら美春は今の俺の話を分析して、矛盾がないか調べたらしい。


「そうだね…お兄ちゃんが来てくれなかったら私はあのまま…………されて、死んでたんだろうな…」


「私達は勇気君のことを信じるよ。」


3人は微笑んだ。


信じる。


それはすべての俺の馬鹿げた話を信じるということだ。本来ならありえないはずのタイム・リープを信じたのだ。


でも、俺は気付いていた。


彼女達が信じたのは、あの時と同じように俺への“想い”からだ。


「ありがとう。…生きていてくれて」


俺は3人を抱きしめた。


………これで、すべてが終わり、この未来がずっと続けばいいと思っていた。


しかし、さっき、考えたとおり、改変された未来を更に改変してしまったら何かが起こる。


それは完全に当たっていて、俺は再び、狂ったようなこの“運命”に立ち向かうことになる。これが、“絶対的な運命”なら、俺に幸せの未来ハッピーエンドは無いんだろう。


だが、この時の俺はそんなことになるなど、思いもしなかった。



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ヤンデレ彼女達が仲良く俺を溺愛する件について。 ฅ꒰ঌ春咲勇気໒꒱ฅ @2291

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