54話 先回り

廃墟・鈴木医院に来た俺は2階の診療室の奥に身を潜めていた。


時刻が、ちょうど“あの時”と同じ時刻になり、俺は咲来楽に電話をかけた。


プルルルル、プッ


「あ、咲来楽?」


『あ?何だお前?』


「何だ?そっちこそ、何だ?咲来楽の電話に出て。」


『なんだ、この女の家族か。……この女は、俺がした。探せるもんなら探してみな』


「言ったな?じゃあお言葉に甘えて探させてもらう。咲来楽の居場所はすぐに分かるからな。体目的なんだろ?だったらその前に助け出す。」


『はっ。よくわかってんじゃねぇか。一時間だけ待ってやるよ。その間は、犯さねぇから安心しな。あ、警察に連絡したらその瞬間犯すから覚悟しとけ?おっと、GPSを切るのを忘れるところだったぜ。GPSも切っとくからよ、せいぜい足掻きな。ヒャハハハハ!』


ブツっ…


電話が切られ俺は笑いがこみ上げてきた。馬鹿な男だ。コイツは…


さて、待つとするか。ここに来るまで。


* * * 


─お兄ちゃん達と別れた後、私はちょっと遠いショッピングモールに足を運んでいた。


そして、その中にある薬局に入った。お兄ちゃんと亜希菜と美春で4〇する為に、コンドームを買いに来た。


私は目的のモノを2個買うと、ショッピングモールを、出た。その時だった。駐車場付近でいきなり、後ろから口元を塞がれた。


「ん〜!ん〜!」


声を出そうにも、布のような何かで口元を塞がれているため、声が出ない。 


「おい、騒ぐな。」


男の野太い声で私は静かにしたほうが賢明だと思い、黙り込む。すると、男の車に強制的に乗せられ、そのまま車は走り出した。


(…怖い…お兄ちゃん怖いよ…)


「安心しな。これから廃院に行く。そこで、たっぷり可愛がってやる。」


プルルルル


男が、そういった瞬間、私の電話が鳴った。この着信音は…お兄ちゃん!


しかし、私の電話に勝手に男が出た。スピーカーにしたらしく、お兄ちゃんの声が聞こえた。


『あ、咲来楽?』


「あ?何だお前?」


『何だ?そっちこそ、何だ?咲来楽の電話に出て。』


「なんだ、この女の家族か。……この女は、俺がした。探せるもんなら探してみな」


『言ったな?じゃあお言葉に甘えて探させてもらう。咲来楽の居場所はすぐに分かるからな。体目的なんだろ?だったらその前に助け出す。』


「はっ。よくわかってんじゃねぇか。一時間だけ待ってやるよ。その間は、犯さねぇから安心しな。あ、警察に連絡したらその瞬間犯すから覚悟しとけ?おっと、GPSを切るのを忘れるところだったぜ。GPSも切っとくからよ、せいぜい足掻きな。ヒャハハハハ!」


ブツっ…


「最低…」


私は気付けばそう呟いていた。


「最低、ね…安心しろ。すぐに自分から喜んで股開く女にしてやるから。」


私は生まれてはじめて感じる恐怖を味わいながら心のなかで祈った。


“助けてお兄ちゃん”と。


* * *


「降りろ。」


男は私の口に布を詰め、声を出せないようにし、私を先頭に病院の中に入っていった。


「2階に上がれ。」


男に言われながら私は階段をのぼった。私のお尻に男のモノが、当たっていた。…気持ち悪い。


これがお兄ちゃんのモノだったらどれだけよかったか…


「おら、入れ。」 


『診療室』と書かれた室内に入る。ベッドがすぐ近くに置いてあった。そこでようやく口に詰められた布を取ってくれた


「そこに寝ろ。」


男に命令されたが、私は動かなかった。嫌だったから。しかし、男は私を、押し倒し…


私のパンツをおろした。


もうダメだ。そう思っても、祈り続ける。そして、叫んだ。


「助けて!お兄ちゃん…!」


「残念だったな?目の前にいるのがお兄ちゃんじゃなくて!」


男が、自分のモノを取り出し私にゆっくりと近付けてくる。


ヤダ…怖い…


そう思った時だった。足音が、したかと思うと、診療室の奥から人影が飛び出し、男を蹴り飛ばした。その人影は私を庇うように手を出し、そして言った。


「助けに来たぞ。咲来楽。」

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