道具屋として

 刺客を倒し、さらにレベルアップした。


 ◇◇◇◇◇◇

 道具屋 レベル10

 従業員 0

 商品 食料品 レベル1 

 ※移動商店 レベル1 ←New

 ◇◇◇◇◇◇


「お? 移動商店?」


 ちなみに、ルキアは疲れたのか座り込み、ガウェイン卿が刺客の装備を没収し、植物の蔦でグルグル巻きにしている。俺は『憑神』のまま、ステータス画面を眺めていた。

 移動商店……これは、いい予感しかない。

 さっそく使ってみた。


「スキル、移動商店!!」


 すると、小屋が光り出した。


「きゃぁっ!? な、なんですか!?」

「ぬおっ!?」

「お、おおお……マジか」


 小屋はしゅるしゅると縮み、形が変わる。

 まるで、ラーメン屋の屋台だった。リヤカーに商品陳列棚がくっついたような。しかもタイヤはゴム製で、サスペンションまで付いている。

 そして、ついに……俺は『憑神』のまま、外に出た。


「お、おおお!! やったぁぁぁぁぁ!!」


 両手を高く上げてガッツポーズ。

 そして、素晴らしいタイミング……夜が明け、朝日が差した。

 朝日が、俺と屋台を照らす。


「ああ、気持ちいい……これが夜明けか」

「あの~……これ、なんですか?」

「すまん今は静かに。俺、ようやく外に出れたんだ」

「は、はい」


 ルキアには悪いが、これで移動できる。

 さらに、驚いたことに、移動商店モードでは魔力が消費しない。

 ちょっと離れてみようと屋台から離れると、十メートルもしないうちに、見えない壁に阻まれた。どうやら屋台から離れることができないようだ。

 すると、刺客を縛り終えたガウェイン卿が言う。


「姫様。そろそろ出発を」

「ええ。マルセイ……いろいろと」

「ちょっと待った!! あの~……俺も途中まで一緒に行っていいですか?」


 移動できるなら、一緒に行くべきだ。

 ユークリッド王国に行くって手もあるけど……妹を殺すような兄貴のいる国には行きたくない。なら、ガウェイン卿やルキアと一緒に、ロード帝国に行くのがいい。

 途中、ガウェイン卿からこの世界のことをいろいろ聞いて……ふふふ、ロード帝国で道具屋を始めるのもいい。ようやく、スタートに立った気がする。

 ルキアは、嬉しそうに顔をほころばせた。


「ぜひ!! マルセイ、一緒に行きましょう!!」

「おう!!」

「確かに。道中の護衛に相応しい強さを持っておる……いいだろう」

「ありがとう、ガウェイン卿!! あのさ、俺、この辺のことよくわかんないから、いろいろ教えてくれよ」

「いいだろう。まずは、この森を抜けてからじゃ」


 刺客は放置しておくことにした。

 運が会悪ければ魔獣の餌。運が良ければ刺客の仲間が助けるだろう。

 俺はリヤカーの取っ手を掴む。


「じゃあ、行くか!!」

「はい!! あ、マルセイ。果物食べたいですー」

「いいけど、栄養ドリンクは?」

「あ、あの黄色い妙な飲み物はちょっと……」

「おい貴様……姫様に変な物を勧めるなよ」

「美味いのになー」


 俺は歩きだす。

 リヤカーを引き、移動商店を引き、亡命しようとしているお姫様と老騎士と一緒に。

 これが、俺の新たな生活の第一歩。


「さぁて、ロード帝国で一旗揚げてやる!!」


 道具屋として、頑張らせてもらおうか!!

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道具屋転生~道具屋に転生させろと言ったが、道具屋(建物)とは言ってない~ さとう @satou5832

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