スライム
バブみ道日丿宮組
お題:突然の錬金術 制限時間:15分
スライム
『はじめまして、こんにちわ』
生まれた生物はそんな言葉を口にした。
私が作り出したとはいえ、液体のような物体に挨拶されるのは正直ドン引きだった。
『どうかしましたか、ご主人様』
近づく生物の顔色は見えないが、おそらく困り顔。
「失敗したかなって」
本当は4足歩行するマウスをイメージして錬金術をしたのであるが、やはり禁じられてることもあってうまくいかなかったようだ。
だが、意思疎通できる生物としては完成した。これをもとに新たな実験を行えば最終的には目標を達成できる。
『失敗ですか。ご主人様のお役に立てず申し訳ない』
しょんぼりとした声色に変わった。
「もう一回素材になってくれるかい?」
『ご主人様がそう望むのであれば構いませんが、同じように認識力を持てるかはわかりません』
それは私もわからない。
完璧な錬金術は未だに確立されてない。
素材を別のものに変換する程度の認識。しかもできる人は限られてる。
かつて心を破壊されたもの、と。
「なら、私は一緒に生活してほしいこを作る」
『できるといいですね。ではやってください』
液体生物は自らフラスコの中へ入る。
『純度をあげたらもしかするといいかもしれません』
「わかるの?」
『はい、液体ですから自分を構成する要素はなんとなく把握できます』
「そう……」
少し考えて、
「ならもう少しあなたと生活してみることにするわ」
急ぐ必要はない。
誰かと研究成果を争ってるわけでもないのだから。
『それは嬉しいことです。ご主人様と会話できるのは感激です』
フラスコに手を近づけると、液体生物は小動物のように乗ってきた。ハンドクリームのようになかなかいい感触がした。
「太陽とか水とか大丈夫なのかな?」
『それは素材に使われたものが耐久性あるものでしたし、おそらくは』
なるほど。
生まれる前の素材の効果が残るものなのか。
私は結局別の個体をもう一度作り直し、液体生物と一緒に研究を進めることにした。
だって、一人は寂しいから。たとえそれが自分が生み出した異型の生物であったとしても……。
スライム バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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