たいよう

バブみ道日丿宮組

お題:見憶えのある光 制限時間:15分

たいよう

 光があると生き物は近づく。それは本能に従う行為で、罠を仕掛けるのに最適だ。

「……一匹か」

 望遠鏡でライトアップされた場所を何度確認しても、鹿は一匹しかいない。

 収穫がないこともあるので、贅沢を言ってはいけないかもしれない。それでも保存できるだけ保存しておいた方がいいのは当然。

 じゃぁ、仕留めるかと側に置いておいた狙撃銃を手に取り、照準を合わせ始める。

 相手は光から逃げ出す素振りがない。

「っ……」

 トリガーを引いた。甲高い音が聞こえたと同時に鹿が倒れた。命中。あとは回収して、不要な部分を太陽の下に持ってくだけだ。

 解体作業は、手慣れたこともあり30分もかからなかった。そぎ取った肉はカバンに、血液は水筒に、それ以外はソリの上に。

 ライトを回収し、ソリへ装着。地図を確認して、どこが一番近いかを確認する。

「……ん」

 東に少し歩けば、光のある場所に出ることがわかった。

 ソリを押しながら、今日のご飯の献立を考える。


 目標場所に近づくに連れて、めまいがし始めた。

 太陽がある証拠だ。

 いくつかのビル影を踏みつけてくと、その光が見えた。人間、動物が浴びることをやめた太陽の光。

「……」

 あまり近づきすぎると、肌組織が破壊されるので遠投する。

 仲間はその距離を競ったりするようだけど、私はそんな余裕がない。死ぬかもしれない光の近くなんていたくない。

 はやく終わらせて集落に戻りたい。


 合計30回の遠投を終えると、私はソリを光の逆方向へ進めた。

 光のない影ばかりの場所。

 人工の光だけが祝福をくれる。


 それが私たち人類が破壊した地球で得られたもの。

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たいよう バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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