第56話 でてきなさいリバイアサン! 海からあらわれたのは……

「くっ……まさか。こんなところで、こんな素敵なモフモフに出会うなんて。しかも、私を釣り上げるなんてこんなところに置いておくのがもったいないわね。いいわ。今日から私の家来にしてあげる。存分にモフらせなさい」




 かかわってはいけないような人魚が現れた。


 釣り上げたのはラッキーも困惑している。




「ラッキー可哀想だから海に帰してあげなさい」


『あいよ』




 ラッキーが思いっきりシッポをバタバタと振っても、その人魚はシッポを離そうとしなかった。




「キャッー楽しい。もっと激しく振って! 激しいの好きー。やっぱり丘の上はいいわね」


 ラッキーがかなり激しく尻尾を振っているが離れるどころか喜んでいる。




「ラッキー」


『あいよ』


 尻尾を振っても離れないので、ラッキーが問答無用で風魔法を放つ。


 そのまま人魚を水平線まで吹き飛ばした。




 俺たちを心配したパトラが声をかけてくる。


「パパー大丈夫? ラッキーがすごい魔法使ったみたいだけど」


「あぁ、大丈夫だよ。そっちで楽しんでなー」


「なにかあったらいつでも言うんだよー。パトラ頑張るからー」




 俺はパトラに手を挙げて答える。 


 パトラは安心したのか、またドモルテたちと遊ぶのに戻っていった。




 砂浜で遊ぶのはいいけど、リアルな城を浜辺に作るのはやめようね。


 見た人ビックリしちゃうから。




 ガーゴイルくんもリアルな設計図とか書いてなくていいから。




 職人気質の従魔たちが向こうの砂浜で本格的な可愛いお城を作ろうとしていた。


 大きさは決して可愛くないけど。




「ラッキーさっきのって人魚だよな?」


『そうだね。私も見たの初めてだったけど。だいぶ個性的な人だったな』




「あぁ。さすがラッキーだな。なかなか、あんなの釣ろうと思っても釣れないよ」


『ロックーそれどういう意味!? 私だってちゃんとしたの釣ろうと思えば釣れるわよ! 見てなさい』




「よし、今度こそちゃんと釣りをするか」




 俺とラッキーはまた同じように釣りを始める。


 先ほど騒いでしまったせいか、俺の方には全然当たりがない。


 魚も逃げてしまったようだ。




「うーん。ダメだな。場所を変えるか」


『ロックちょっと待って! すごい引きだ! これは大物の予感がする』


「おっいいぞ! ひ……け……」




 ラッキーが見事釣り上げたのは、先ほどの人魚だった。




「あなたたち、どれだけの力だせば、あんな遠くに飛ばせるのよ。ビックリしたわ。久しぶりに本気になって泳いだじゃない」




「ラッキー」


『あいよ』




 ラッキーが先ほどよりも、かなり強めの風魔法を放つ。


 先ほどまで広がっていた青空から一気に暗い雲へと変わっていく。




 天候にまで影響を与える魔法なら、きっと大丈夫だろう。


 人魚がものすごい勢いで水の上を飛んでいった。




 危ない、危ない。


 絶対に絡んではいけない奴だ。




「コラ! ロックにラッキー! パトラたちが一生懸命作った城が壊れるから、魔法使うにしても弱くしなさい! しかも天候までかえるとか、魔王でも相手にしてるんじゃないんだから。ほんとに! 加減を覚えなさいよ」




 ドモルテが大きな声で俺たちに注意をしてくる。


 そしてそのまま、ドモルテが杖を上にかかげると、空にかかった雲を一瞬で払ってしまった。


「悪い! 気をつける!」




 ドモルテも天候をあっさりと変えてしまうとは、本当にすごい賢者だったのだろう。


 現在は箱庭産ダンジョンの魔石を使っているおかげで、ドモルテもほぼ魔力の制限がない。




『ロック、だから言っただろ。加減は大事なんだよ』


「いやいや、魔法放ったのはお前だからな」


 ラッキーは、俺だけが怒られたといった感じで言ってくるが、原因はラッキーにもある。




 そんな感じなら俺にだって考えがある。


 思いっきりモフモフの刑だ。




「ほら、ラッキーここが気持ちいいんだろ。反省しろ!」


 ラッキーの首にダイブして思いっきりくすぐってやる。ラッキーは意外とくすぐりに弱いのだ。




『やめろ! わかった。私が悪かった。ちゃんと加減する』




 俺とラッキーがじゃれあっていると、聞きなれない声がまた聞こえる。




「いい、すごくいい。きっと地上はモフモフ天国になったのね」


 人魚が今度は自分で崖を登ってきていた。


 この子、どれだけ打たれ強いんだ。




「ラッキー」


「ちょっちょっと待って! 話せばわかる。さすがに次に同じ魔法を使われたらさすがに防ぎきれないから。泳ぐのも意外と大変なのよ」




 人魚はかなり慌てながら両手を前にだし、敵意がないことをあらわす。




「わかった。それでどうしたいの?」




「いや、海の中にモフモフっていなから、そちらのわんこちゃんを少し触りたいだけなの。そうしたら大人しく帰るわ。ちょっとだけでいいから」




 ラッキーが俺の横でプルプルと震えだす。


『だれがわんこだー! 私は誇り高きフェンリルだ! ワオォーーーン』




 ラッキーが吠え、先ほどと同じ勢いで人魚をふっとばした。


 さっきも大丈夫だったし、きっと今回も大丈夫だろう。




『どっから、どう見てもフェンリルなのに失礼な奴だよね!』




 とりあえず苦笑いしておく。


 俺もたまに犬のような気がしていたのは、口にだすのは止めておいた。


 あの勢いで飛ばされたら、俺だったら生きては戻れる気がしない。




「釣りもしようと思ったけど、今日は諦めるか」


『そうだな。特大魔法3回使ったからな。地味に疲れた』




 俺とラッキーがみんなのところへ戻ろうとしたところ、また懲りずに人魚が現れた。




「なんだ? まだやるのか?」


「もういいの。私わかったから。人間は拳で語り合って仲間になっていくのよね。だから私も仲間を頼るわ。でてきなさい! リバイアサン!」




 海中から大きな水龍が現れた。


 ちょっと待て! 


 こんな理由で水龍と戦いたくなんてないんだけど。


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人魚「高速で泳ぐの得意なの」

リバイアサン「本当は?」

人魚を毎回高速で運ぶけなげなリバイアサンがいた。


少しでも面白ければ♥をよろしくお願いいたします

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幼馴染のS級パーティーから追放された聖獣使い。万能支援魔法と仲間を増やして最強へ! かなりつ @KanaRitsu

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