第2話

それから私たちはたまに待合室で会ったが、会釈をするだけで、会話をすることはなかった。精神科の待合室には、会話をしちゃいけない雰囲気が流れている。そして私には彼女に話しかける勇気なんてなかった。友達ができても最後は嫌われる、なんとなく経験からわかっていた。

そんな私の友達はTwitterだった。ここでなら友達がたくさんいる。私と同じように悩んで、病んで、苦しい思いをしてる人が、そして、消えたい、死にたいと思う人が……

私は#病み垢さんと繋がりたいを漁っては、ハートを送る日々を過ごしていた。私もまた、病み垢界隈のひとりだった。偽りの名で呟かれる言葉だけは本心だった。自分だけじゃない、その安堵感に縋っていた。

今日もまたリプを送り、ツイートをし、同じタグを見漁る。目に止まったのはある自撮りアイコン。界隈特有の暗いフィルターとキャラクターのスタンプであまり顔は見えないが、彼女だ、と私は確信した。プロフィールに飛び、ツイートを見る。「あの子と話してみたい」私はドキッとした。「診察券の子と精神科で会った」心拍数はさらに上がる。「精神科の診察券を人に拾われた。恥ずかしい。死にたい。」間違いない、私のことだった。"人"から"あの子"へと私の呼び方が変わっていくことに少し嬉しくなった。彼女もまた、私と話したい。そう思ってくれている。自意識過剰かもしれないけど。そんなことを思いながら、私はタグ付きツイートと自分に関連してそうなツイート、それから、怪しまれないように他のツイートにも何件かいいねをした。気持ち悪い、我ながらそう思った。でも、彼女と繋がりたい、そう強く思ってしまったら、自分の指を制御することはできなかった。

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不幸が似合う子 坂道 転 @sleepy-slope

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