勇者として生まれた男の願い



そして今代、再び勇者として生まれた。


400年前、勇者が魔王に殺されたことで、魔王の支配が400年続いていた。

王家は滅びており、人々は魔族に虐げられ、勇者の復活を願う、そんな世の中になっていた。




3度目で僕は勇者とは何かを悟った。


本人の意思は無視され、顔も知らない人々の願望を押し付けられ、自分の全てを犠牲にすることを強要され、そして誰も勇者を救ってはくれない。


そんなものを3度も押し付けられているのが僕だ。


転生とか復活とか、何だか神々しい言葉で崇め奉られるが、これはただの再生だ。

曲が終わりレコードの針を最初に戻して、また同じ曲を流しているのと一緒だ。


だから僕は勇者の役目を放棄した。

人々の願いを踏みにじることにした。


時間はあまり無かった。

15歳になれば神託が降り、僕が勇者だということが人々にバレてしまう。


だから僕は10歳になった日に家を出た。魔王に会う為に。




魔王に会えたのは、16歳の時だった。

神託は降りたらしいが、僕は逃げ回り何とか魔王の元へ辿りついた。

そこまでの道のりは大変だった。

声を失い、片目は潰れ、左手も失っていた。


でも魔王は僕の事を覚えていてくれた。

魔王は僕に優しかった。

僕が1000年前、そして400年前に望んだ”穏やかで平穏な余生”を魔王は与えてくれた。


僕の念願は叶った。

意味の無い勇者再生のシステムを、僕は終わらせることが出来たんだ。




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勇者、再生 バネ屋 @baneya0513

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