プロファイラーX
朽木桜斎
わたしのプロファイルに失敗はありません
そのように告げ、
「しかし冪丸さん、被害者は脳梗塞による自然死だと鑑識が……」
「いえ、中川刑事、犯人は
冪丸プロファイラーはそうさえぎった。
「誘導とはどういうことかね? 冪丸くん」
「犯人は被害者が、5年前に一度、軽度の脳梗塞に罹患していたことを知っている人物です。そしてやはり、被害者が平素から塩分濃度の極めて高い食事を好んでいたことも」
「なんですって!?」
「それは本当かね!?」
中川刑事と深堀警部は同様に驚いた。
「わたしのプロファイルに間違いはございません。失敗などないのです。警部、すぐにでも被害者に近しい人物から洗うのが英断かと」
「わ、わかった! 中川くん、頼む!」
「はい、警部!」
そのとき、鑑識官の
「警部、新たな事実が判明しました!」
「恒田くん、それはいったい?」
「被害者が好んでいた秋田県産のいぶりがっこの中に、健康な成人でも危険なレベルの塩分濃度を含むパックが混ざりこんでいたようです!」
「では、やはり犯人が!?」
中川刑事は声を荒げた。
「いえ、それが……」
「なんだね? はっきり言いたまえ!」
深堀警部は恒田鑑識官に詰め寄った。
「それが、そのいぶりがっこのメーカーであるジャッパッパ・フーズに、たまたまマッチング・アプリで一日だけバイトに来ていた
このように恒田鑑識官は、とくとくと語った。
深堀警部は話を聞き終わったあと、深いため息をついた。
「よ~く、わかった。つまりこういうことだ、失敗はもちろんあったし、その原因は、しょっぱいだったわけだな」
中川刑事は静かに拍手をした。
「警部、座布団10枚です」
二人は背中もさびしく現場を去った。
「……」
数日後、冪丸プロファイラーの自宅マンションに、ジャッパッパ・フーズ製のいぶりがっこが郵送された。
差出人は警視庁の広報課、同梱のポストイットにはこう書かれていた。
「餞別」
(完)
プロファイラーX 朽木桜斎 @Ohsai_Kuchiki
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