第19話 平和の訪れ、そして冒険の終わり

ルミナスフィアに乗り込むとフロント画面にフォトン国王が写った。


「ジュンくん!見事だったね!そしてニノ、無事で良かった!!どうなることかと思ったよ!ダーククロイツを再び捕獲してくれてありがとう!」


ジュンは心底ホッとした顔で言った。

「無事に鉱石を取り戻せてよかったです。」


「博士!ジュンすごかったですね。まさか3体を合体させるなんて!」


「そうだね。開発者の予想を上回る、素晴らしいひらめきだったよ。ジュン君、君はこの世界とオルガ界のヒーローだよ!」


ジュンは照れくさそうに微笑んだ。


「そういえば、捕らわれたニノを助けたくて心の中で一生懸命祈ったら、一瞬鉱石が5色に分かれて光った時がありました。あれは一体なんだったのでしょう?」


「大宝鉱石達は力の強いいにしえの国王達の心臓だったもので、王達の魂が宿っていると言われている。

闇黒石にされるのは彼らの意に染まず、もともと分離したがっていたのかもしれないね。そして、ジュンくんが祈った気持ちがいにしえの王様達の魂に届いたのかもしれない。」


「そういうことですか。」


たしかにあの一瞬、大宝鉱石達が自分達の味方をしてくれた気がした。フォトン博士の説明がなんとなく腑に落ちた。


フラッシュスピナーの心地いい席に座ると安心してジュンは急激に眠気が押し寄せてきた。


「ジュンくん、目が半分閉じてきてるね。疲れているのにすまなかったね。とりあえずゆっくり眠っておくれ。」


そう言って画面が消えた。

ジュンのまぶたも完全に閉じて深い眠りに落ちた。


2日後、すっかり回復したジュンはニノと一緒に研究室で博士の発明品を興味津々で見ていると、お城の方に呼び出された。


「先日も話したが、もう少ししたらジュンくんが取り戻してくれた鉱石達を返す返還式と祝いの宴が始まるのだ。参加しておくれ。」


ジュンはドキドキしながらうなずいた。


返還式は以前に国王達が会議をした光の広間で行われた。円卓に着いた王達にまずフォトン国王が挨拶をした。


「各国の王達よ。よくお集まりくだされた。ここにいるジュンくんとニノが我らの世界の宝の鉱石を取り戻してくれたのだ。今ここに全ての大宝鉱石をお返しする。」


クリスタルの台座の上に置かれた鉱石を、光の国の女官達がうやうやしく各国の王の前に差し出した。

国王達は皆、自分の目の前に置かれた大宝鉱石を安堵と喜びの表情で見つめた。


大地の王ドレイクが立ち上がって言った。


「ジュンくん!ありがとう!君は我々が代々受け継いてきた国の宝を取り返してくれた!この世界を代表して君に感謝の気持ちを伝えるよ。」


他の国王達も立ち上がりジュンに感謝と敬意の眼差しを送った。


ジュンも慌てて立ち上がった。恥ずかしくて顔が熱くなってくるのを感じながら答えた。


「お役にたてて大変光栄です。王様達から大宝鉱石をお借りできたことと、フォトン博士とニノのサポートのおかげでなんとか使命を果たすことができました。」


国王達も家来もみんなが大きな拍手をしてくれた。


「そうだ。皆様に見せたいものがあるのだよ。」


フォトン国王が入口の方に目配せをすると、1匹の子ドラゴンが兵士たちに連れられてやってきた。ドラゴンは口元には噛みつき防止のためか金色の優美なデザインの口輪と鎖がついており、銀色のうつくしいうろこはキラキラと輝いていた。


広間はたちまち大騒ぎになった。王様達は厳しい顔をして後ずさり、兵士達は自分の王様を取り囲んで戦う構えを見せた。


「フォトン国王!これは一体どういう事ですか?皆を危険にさらすおつもりですか?」


フィオナ女王が驚きと怒りを抑えた声で言った。


「驚かせて申し訳ない。この子ドラゴンはロボットを襲わないのだ。我が国が開発した人工鉱石を餌として食べていて、ロボットが持つ天然の鉱石を食べ物だと思わないように躾けたのだ。飼育係との信頼関係も育ってきており、少しの芸もするようになった。」


フォトン国王は飼育係に目配せをすると、飼育係がドラゴンに声をかけた。

すると子ドラゴンは飼育係の顔を真っ直ぐ見つめると、その場でくるりと一回転して座った。もう一度声をかけられるとバサバサと羽ばたき1メートルほど飛び上がりまた降りてきた。


「このように子供の頃から信頼関係を築いて大切に育てれば、ドラゴンは我らの敵ではなく、頼もしい仲間になってくれる可能性もあるという事を皆様にお知らせしたかったのだ。これからは闘うばかりではなく、共存する試みを各国でも試していって欲しい。」


皆従順な子ドラゴンの姿を目の当たりにして、少しドラゴンへの親しみが湧いてきたようだった。国王達はフォトン国王の言葉に、神妙な顔をしてうなずいた。


その様子を見て、ジュンは嬉しくてたまらなくなった。ロボット達が襲われるのはもちろん良くないけれど、だからといってドラゴンを殺してしまう事にもずっと疑問を抱いていたからだ。


「国王陛下、国民達が参賀のために城の前に大勢集まっております。」


「おお、そうであった。ジュンくん、国王達よ、我が国民にその姿を拝ませてやっておくれ。」


ジュンはフォトン国王に肩を抱かれてバルコニーに出、その後に国王達が続いた。


「うわぁ。」


明るい光が降り注ぐバルコニーの下の中庭には光の国の民達がたくさん押し寄せ、歓声をあげていた。皆口々にジュンの名前や感謝の言葉を叫んでいるようだ。


「皆に手を振ってあげなさい。」


フォトン国王に言われ、ジュンがおずおずと手を振ると、中心の方からどよめきが起こり、さらに歓声が大きくなった。国民達が心から喜んでくれている姿をみて、ジュンは感動で胸が熱くなった。


さらに一夜明けて、ジュンが人間の世界に戻る時がやってきた。


「もっとゆっくりしていってほしかったんだけどね。」


「ぼくももっとこの世界にいたいのですが、学校もあるし、両親も心配するので。」

ニノはしょんぼりとして元気がありません。


「もっとジュンと一緒にいたかったな。」


ジュンはニノの小さな手を両手でぎゅっと握りしめて言った。


「ぼくも、ニノとはもっと冒険したかったよ。戦いの時、いつも君が側にいてくれて本当に心強かったよ。」


「ぼくもジュンと一緒にたくさんの冒険ができてとても楽しかったよ!またこちらの世界に遊びに来てね!絶対だよ!」


ジュンは今度は博士の方を向いて言った。


「これ、お返ししますね。」


博士にツクロボのグローブとゴーグルを手渡した。


「いいのかい?これはジュンくんの為に開発したものだから、返してもらうのはよそうと思っていたのだ。」


「このグローブは本当にすごいものだと思いますが、ぼくの今住んでいる世界では必要ないと思うんです。それとこのグローブは力がありすぎるから、人間の悪者に狙われることもあるかもしれません。」


「うーん。たしかに。君のいう事ももっともだ。ではこのグローブは一旦預かっておくよ。代わりに君にはこれを持っていてもらおう。」


そういって博士はジュンの右手に何かを握らせた。ジュンが右手を開いてみてみると、それはニノがジュンのリュックにつくためにキーホルダーに変身した時と同じしずく型のキーホルダーだった。ただ、こちらの方がずっと小さかった。


「そのキーホルダーは、さすがにニノに変身したりはしないが、地球とこの世界で通信できる機器が組み込まれておる。裏にある隠しボタンを押せば、ジュンくんのほうからこちらに連絡してくる事もできるし、こちらからも呼びかけることが出来る。」


「すごく嬉しいです!ありがとうございます。」


「なにか困った事があったら連絡しておくれ。こちらもまたジュンくんにお願いすることができるかもしれない。」


ジュンは嬉しそうにキーホルダーを眺めると、大事そうにポケットにしまった。


トトの頭を撫でた後、ジュンは言った。


「それでは、また!」


「また会える日をたのしみにしてるぞい!」


「またね!きっとだよ!遊びに来てね!」


ジュンは笑顔でみんなに手を振ると、ワープホールに入った。




あれから一ヶ月がたった。


ジュンは学校から帰宅し自分の部屋に行った。

ベッドに座ったまま寝転ぶと、博士からもらったキーホルダーをなんとなく眺めた。帰ってきてから、もう一ヶ月も過ぎたんだな。ドラゴンを捕まえる冒険は危険な事もあったけれど、みんなで協力し合って困難を乗り超えられた充実した時間だった。

ニノや博士にまた会いたいな。でも、特に用事もないしむずかしいよね。と思いながらキーホルダーを持った手を下ろし、天井でゆらゆら揺れている太陽系のモビールに視線を移した。


ジュンの手の中のキーホルダーがピカピカ光りだしたのに、彼が気づくのは、この後、数秒後のこと・・・。



    <おわり>



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

イメージ力で戦闘ロボットをクリエイト! 〜ツクロボ☆クエスト〜 @kanna07

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ