自慢したい気持ちと、それを超える独占欲
ある日の昼。キャットタワーの天辺で毛繕いをしている私と雑誌を交互に見ている飼い主三人。
「やっぱりさぁ、他のどんな子よりみぃちゃんの方がかわいいよねぇ」
ミツがぽつり、と呟く。
「「はぁ?当たり前じゃん」」
その言葉に要と薫さんが声を合わせて言う
そんな三人を私はまーた何か始まったよ…と、冷めた目で三人をキャットタワーの上から見詰めていた。
面倒な事が起きる前に逃げるのが勝ちだ。そう思った私は寝たふりを開始。
……寝たふりをした私は今、凄く写真を撮られている。
どうしようかなぁ。でも今起きたら絶対撮影会が始まってしまう。いや、もう始まってるけどね!!
どうしよう……かな、ぁ
猫の身体とは単純な物なのか、私が単純なのか。寝たふりのつもりが本当に寝てしまったらしい私は起きて未だぼうっとした頭で考えた。
確か、凄く写真を撮られていた気がする。
あれ、あの三人は何処へ……?
「わぁー!」
ミツの大きな声が隣の部屋から聞こえ、私は吃驚して思わず固まる。
そろり、静かに隣の部屋に向かえば、三人ともそこに集まっていた。
何やらPCを取り囲んで喜んでいる。何をしているんだろう……?
「みゃぁう」取り敢えず困ったら鳴いておけばいい。勝手に解釈してくれる。
「あ、みぃちゃん!起きた?誰も居なくて寂しかったのかー?」
要が私を抱き上げ膝に乗せる。
ミツと薫さんが羨ましそうに見ている。三人が何を見ていたのか気になった私は、PCを覗き込むようにして見た。
そこには{みぃちゃんの日常}と書かれたホームページが……なにこれ?
「ほら、みぃちゃんの事みんな可愛いって言ってくれてるんだよ~」
ミツは私が寝ている画像の下に書かれた沢山のコメント欄を見せてきた。
え……私が寝ている間に一体何が…?
と、思われるような沢山の数のコメントがずらりと並んでいた。
美猫ー!可愛い猫ちゃん!といった内容を見せられて私はどうすれば……
「みゃぁ」思わず戸惑いの声が洩れる。
「そっかそっかぁ、みぃちゃんも嬉しいねぇ。」
要がご機嫌そうに私を撫でる。いや、そうじゃなくて……いや、もういいや。どうせ通じないしなぁ
そんな中、薫さんだけが不機嫌そうな雰囲気を醸し出していた。
要とミツは楽しそうにホームページに写真を載せているが、やはり薫さんは複雑そうな表情をしている。
「どうしたんだよ、こんなにみぃちゃんが可愛いって褒められてんのに。何が気に入らねぇの?」
「そうだよぉ、みぃちゃんの可愛さが皆にも通じて嬉しいでしょ?」
要とミツが薫さんにぶつくさと文句を言っている。
そうして、今まで無言だった薫さんがやっと口を開いた
「いや、嬉しいよ?みぃちゃんはどの猫ちゃんよりも可愛いし、嬉しいんだけど……こんなに可愛いんだからさ、ネットに載せたらいつか誘拐されたり……。」
そう言って薫さんは目を伏せた。
その言葉に要とミツは顔を合わせ、そっとホームページ削除をクリックした。
「みぃちゃんの可愛さは俺達だけ知ってりゃ良いよな!なぁミツ!」
「そうだねぇ!!みぃちゃんは私達だけの猫ちゃんだもんね!」
そう二人が頷き合うと、やっといつもの様子に戻った薫さんは私を優しく撫でて「どこにも行かないでね。みぃちゃん」と言う。
焦った様子の要とミツも私を撫でながら「知らない人には絶対着いて行っちゃだめだよ。」「俺達以外にはお返事禁止だからな」と言い聞かせてくる。
結果的には三人で私を撫でて「「「ずっと一緒に居るんだよ」」」と、言うので。私はいつも通り「みゃぁ」とお返事を返した。
そうして{みぃちゃんの日常}はたった数時間で封鎖されたとさ。
猫なのに溺愛されて困っています(短編集) 紫くらげ @396cat
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