猫なのに溺愛されて困っています(短編集)
紫くらげ
私と三人の飼い主の関係性と、その日常
私は猫です。
いえ、猫に転生した元人間です。
そんな私は今、二人の男の人とに溺愛されています。
所謂モテ期……です。
何故!今この時なんだ!!
「みぃちゃんは今日もかわいいねぇ。」
デレデレとした顔で此方へ話しかけてくるその男は、一応私の飼い主である要だ。
「みゃぁ」といつも通り返事を返す私。
その返事に気を良くして更に話しかけてくる私の飼い主。
いつもの日常。
その日常に最近追加されたものがある。
「みぃちゃん、僕にもお返事して?僕の事好きだよねぇ?」
私はまた「みゃぁん」と、お返事する。
優しそうな風貌のその男は薫さんと言う。
優しそうな見た目とは裏腹に、意外と強引なこの人はいきなり要の家へ転がり込み、今や私の第二の飼い主だ。
「あっ、薫テメェ!みぃちゃん!!俺は!?俺の事は勿論大好きだよな?」
薫さんの問いに返事した私。それを見て負けじと此方へすごい勢いで言葉を投げかけてくる要。
面倒なこの光景もまた最近の日常だ。
正直面倒だ。しかし返事をしないと更に面倒な事になるのは目に見えている。
「みゃぁう」と、私は返事を返した。
「あ!それはずるいよ。僕は好きって言ったのに!!大好きか問い掛けるのは駄目だよ!」
悔しそうな薫さんに、要は勝ち誇った顔で鼻で笑う。
この後の事はもう想像がつく。
「「みぃちゃん!俺(僕)の方が好きだよね!?」」
あーあ、始まった。この時私がとる行動はもう決まっている。
「みゃぁ」と鳴くだけ。
どうせこの二人には私の心の中は読めないんだから、どう鳴いたってなにも変わらないのだ。
「ほら、みぃちゃんは俺の方が好きだってよ?
「はぁ?みぃちゃんは僕の方にお返事したんだよ?何を勘違いしてるの?」
はい、これも毎度の事。そして必ずここで……
「二人ともなぁに喧嘩してるの?みぃちゃんの前で喧嘩していいのかなぁ?」
ミツの登場だ。
私はミツの足元にすり寄る。
そして「みゃぁ」と鳴くと優しく抱き上げてくれる。
ミツは可愛らしく微笑みながら私の頬辺りを撫でてきて、思わずゴロゴロと喉を鳴らす
んー、ミツの体温が心地よい。
私はもっと撫でて、とすりすりと身体をすり寄せる。そしてミツを羨ましそうに眺める人が二人。要と薫さんだ。
先程ミツに喧嘩していたのを怒られた為、唇を噛み締め悔しそうにしている。
「喧嘩ばっかりする馬鹿は放っておいて、みぃちゃんは私と向こうで遊ぼうね~」
ミツは私を抱き上げたまま、二人を差し置いて部屋を移動しようとしている。
「ミツ!俺が悪かったから!!俺にもみぃちゃん抱っこさせて?」
「先程はすみません。あの……僕にもみぃちゃんを触らせてほしいなぁ。なんて……」
凄い勢いでミツに頭を下げる要。
薫さんも出遅れて頭を下げて、謝っている。
ミツは「どうしよっかなぁ~」と、二人に意地悪をしている。
その光景が面白可笑しくて、私はミツの頬に自分の頬を擦り合わせて、いかにも懐いてますよアピール
先程まで喧嘩していた要と薫さんは青ざめた顔を見合わせ、このままではミツにみぃちゃんを取られてしまうぞ。と、作戦会議をしている。
そんな日常を送っている私は、猫に転生したけれどとても楽しく幸せに暮らしています。
いつまでもこの日常が続きますように。
そう思い、私はミツの腕の中でこの状況を楽しむのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます