【速報】野生化したルンバの駆除に猟友会が山に入りました
ちびまるフォイ
怪獣ルンバ
「いいか、油断するんじゃねぇぞ。どこからやってくるかわからないからな」
猟友会のおじさん達は猟銃を持って山に入った。
ルンバは静音なので気づいたときにはすぐそこにいる。
のどかな森に緊張感が張り詰める。
「あ、ああ!! る、ルンバだぁ!!!」
猟友会のひとりが叫んで指差した。
その先に待っていたのは野生化した巨大なルンバだった。
家庭で飼われていた頃の面影などすでになく、
電話ボックスよりも巨大なボディと大きな吸込口がこちらを向けていた。
「うあああ! 撃て! 撃てーー!!」
山に入ったルンバ猟友会の人たちは、撒き散らした薬莢もろともルンバに吸い込まれた。
この事態を重く見た偉い人たちは山への入山を禁止し、近くに住んでいた人も避難させた。
「どうします? いつまでも入山禁止にし続けることもできませんよ」
「……焼く」
「え?」
「山を焼く。山を丸裸にしてルンバを見つけ出すんだ。
どこにルンバがいるか空から見れればやりようはいくらでもある」
「しょ、正気ですか!? 山には他の動物もいるんですよ!?」
「本当にそう思っているのか?」
「ま、まさか……」
「動物なんてもういないさ。あの野生化したルンバにすべて吸い込まれてしまったからな」
「そんな……!」
「我々が相手にしているのはルンバではない。
人間の手で生み出してしまった危険な機械生物なんだ……!」
野生化したルンバをなんとかするべく作戦が結構された。
山には火がつけられ、木々をもれなく焼き払った。
緑生い茂る山はみるも無残な茶色へと姿を変えた。
これで野生化したルンバがどこにいるかわかるかと思いきや。
「い、いないぞ!? ルンバがいない!!」
「バカな! どうして山にいないんだ!!」
ドローンやヘリコプターでいくら山を探してもルンバはいなかった。
荒れ果てた土だけが山に残されている。
そこにルンバ研究所の所長がやってきた。
「まずいかもしれないぞ……」
「ルンバ所長! まずいとはどういうことですか」
「ルンバには部屋のお掃除学習機能が入っている。
山を焼いたことで掃除する箇所がなくなってしまったのじゃ」
「それってどういう意味ですか……」
「より掃除すべき汚れた場所を求めて移動したという意味じゃ」
「なんだって!?」
気づいた頃にはすでに遅かった。
野生化したルンバは市街へとやってきてあらゆる建築物と生物を飲み込んでいた。
「きゃあーー! 誰か助けてーー!」
「吸い込まれるーー!」
街には悲鳴がこだまし、あれだけポイ捨て天国だった道路はキレイになってゆく。
「もし街がすべて掃除し終わったらルンバはどうなるんですか!?」
「同じことじゃ。またルンバのやつは掃除の新天地を求めて移動する。
その繰り返しでこの日本すべてを飲み込み終わるまで止まることはないぞ」
「そ、そんな……」
「もうおしまいじゃ……なにもかも」
誰もがあきらめたそのときだった。
ルンバの前にひとりの人間がたちふさがった。
その無謀な行動に逃げている人も目を疑う。
「おいあんた何してる!? 吸い込まれるぞ!!」
男は動かなかった。
ルンバの吸込口がみるみる近づいてくる。
黒く広い吸込口が眼前に迫ったときだった。
「すまなかったな……ルンバ……」
男はぽつりとつぶやいた。
ルンバの動きが止まった。
「まだ使えるのに新しいのを買ったからって、お前を山に捨ててしまって。
寂しかったんだよな。本当は家に帰りたかったんだろう」
ルンバは動かない。
「吸い込んでも吸い込んでも捨てる場所がなくて、
こんなに大きくなっちまって……。本当に悪かった。
お前の気が済むのなら、俺を吸い込んでくれ。それで気が晴れるのなら」
シュウゥゥン、と空気が抜けるような音がルンバから鳴った。
ルンバの電源が消えて動かなくなった。
「み、見ろ! ルンバの電源が落ちたぞ! やったーー!!」
逃げ惑っていた人たちはルンバがもう襲ってこないことに安心して大喜び。
映像を見ていた所長や偉い人たちは首をかしげていた。
「所長、ルンバはどうして止まったんですか」
「わからん。ただひとつ言えることは、ルンバには学習機能があるんじゃ。
その学習のなかで飼い主への情も学んだのかもしれん……」
ルンバの大騒動は落ち着いたが、野生化したルンバの原因を作った飼い主は呼び出された。
「今回の事件をうけて本当に反省しました。本当にすみませんでした」
「今もルンバは飼っているんだよな? もう山に捨ててないよな」
「ええ、もちろんです。安心してください」
「そうか、よかった……」
「前に使ってたやつは海に捨てましたから」
その後、深海調査隊からマッコウクジラを飲み込むルンバの姿が撮影された。
【速報】野生化したルンバの駆除に猟友会が山に入りました ちびまるフォイ @firestorage
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