にく
バブみ道日丿宮組
お題:清い光景 制限時間:15分
にく
四肢を取り除かれた肉は元の動物がわからないほどで、たとえこれが人間であると言われてもわからないものだ。それぐらい肉というのは食材としてわかっていない。
今日出てきた肉団子。
なんの肉であるか説明はなかった。
これまで狩りを行ってきた牛、イノシシ、人間、鹿のいずれかであるかはわかってる。だが、味覚というのは非常に曖昧なもので魚を食べても動物を食べた気分を味あわせてくる。
もっとも見た目がそれっぽいとそれっぽい味しかしてこないものだが。
「そっち削ぎ落とした?」
仕事仲間の言葉で自分の仕事から目を背けてたのを思い出し、
「こっちはあまり肉がないから時間かかる」
ナタを使って肉を削ぐ。
天然物の肉は養殖物と比べて肉がつかない。そのぶんいろんなものを食べてるから多少味がいい……とされる。
僕たちが一般的に口にするのは養殖物だ。天然物のほとんどはこの国の主に近い者たちが食べる。ごく一部の食材がごく一部のものしか手に入れられない。
よくわかる構図だ。
「……」
味の違いはよくわからない。
形が悪いものは工場で処分するのが決まりで、僕もその恩恵を受け食べたものだがやはり量が少ないこともあってあまり良いものだとは思わなかった。
「次はもっとそげないヤンキー集団の肉だってよ」
作業終了のランプをおして仲間はこちらへと顔を出した。
「なるほど」
さきほどまで叫び声が聞こえてたのはそれが原因か。
生きたまま頭を落とす。それが一番最初の削ぎ。そこでおそらくヤンキーが叫んだのだろう。自分がどうなるかはくる前からわかってたはずだ。
国に逆らうものは、国の栄養となる。
「はぁ……お風呂入りたい」
お風呂に入っても肉の匂いはとれないだろうけど、そのままにしておくのはもっと嫌だ。
「もうかれこれ4日は工場詰めだものね」
仲間が休憩室に入ってく後を追う。
「なんどみても絶景よな」
「そう……? ただの四肢がない肉じゃないか」
わかってないなと仲間は鼻で笑う。
「わたしたちの目じゃ天然物、養殖物、どんな動物なのかわからない。つまりはどれも同じ高級さがあるといってもいい」
「ふーん。だからといって残ったもので作られるご飯の味は変わらないよ」
仲間に文句をいってると、休憩室に置かれた搬入口からトレイに乗ったハンバーグ定食が運ばれてきた。
「毎日肉料理だしわからなくもないがこれで生きてるんだから仕方ないだろう」
そうだねと仲間に微笑みかえし、私はトレイをテーブルへと運んで食事を始めた。
口に広がるのは、いつもと変わらない味……だった。
にく バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます