世界の形、私の右隣 (※lily微注意)

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「はあ」

　大変だった。たぶん、生きてていちばん大変だった。生きてるひとを、担いで、運んだ。重かった。ため息は、声にならない。

「ああ。いてて」

　こらっ。動くな。動いたらまた傷がいたくなるでしょ。

「しにそこねた」

　はあ？

「いたいっ」

　叩いた。傷口を狙う。いたいだろ。いたいってことは、いきてるってことだ。どうだわかったか。このこの。おら。

「いたいです。やめてください」

　わたしは、喋れないから。彼女を叩くぐらいしか、この不満を表現する方法がない。

　彼女の手が、伸びてきて。

　わたしの頬にふれる。なみだ。

　そっか。泣いてたのかわたし。くすぐったい。

　わたしにとっての世界は、あなた。あなたひとりだけが、わたしの世界の形。だから、これからも。わたしにふれて。わたしを大丈夫にしてよ。

　やっと会えた。

　うれしい。

　これからも、よろしく。

　同じ世界に。わたしの右隣に。あなたがいる。それだけで。たのしい。