「はあ」


 生き残ってしまった。


「ああ。いてて」


 筋肉を多少傷つけた程度。おいしゃさんもびっくりの、鋼鉄みたいな身体。


「しにそこねた」


 次、またこういう機会は訪れるのだろうか。


「いたいっ」


 叩かれる。よりによって傷口。


「いたいです。やめてください」


 それが、彼女の。せいいっぱいの表現だった。

 まさか、喋れないとは思わなかったし。

 それでも、生き残った。たぶんこれからも、生きていくと思う。彼女のとなりで。

 右隣にいる彼女を支える。それが、たぶん、私。誰も知らなくても。わからなくても。とりあえず私が、なんとかすればいい。なんとかなるだろう、たぶん。死にはしない。

 彼女の頬に手を伸ばした。涙の湿度。頬の温度。感じる。さわれる。彼女は、ちゃんと、ここにいる。

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