04 β ENDmarker.

 いたい。

 どこがどうとか、そういう、よくわからないけど。とにかく、いたい。何かがおかしい。わたしの身体じゃない。他の何か。どこかの、だれか。

 右隣。

 そう。

 いつもそこにいた、誰か。いたい。つらい。大丈夫じゃない。

 大丈夫じゃないのは、大丈夫じゃない。大変なこと。よくわからないけど、とにかく、大丈夫じゃない、というのは分かる。

 いない。

 どこに。

 いたみの感じられる方向に。

 走る。

 もうなんか、わけがわからない。

 身体中。変に何かが絡まって。動けるけど、動けない。寝起きのかなしばりみたい。なにこれ。

 感じる。でも、これは。知っている。この動けない感じ。おもたくて、しんどい感じは。

 そう。

 わたし。

 これは、わたしの感覚。

 これが、向こうにも。わたしの右隣にも。わたし。わたしの右隣は、いつも、こんな感じだったのだろうか。わたしは。いつも。こんな感じはしなかった。わたしはいつも大丈夫で。右隣のあなたは。いつも。こんなに重たかったのかな。なんか、なみだでてきた。なんで。なぜわたしの重たい感覚を、あなたが背負ってるんですか。頬をいっぱつひっぱたいて、問いただしてみたい。なんでわたしを。ああもう。よくわからない。わからないのに、わかる。寂しいんだ。寂しい。右隣にいたひとは。いつも。寂しかったのに。わたしは、何も気づかずに。


「いてて」


 声。路地裏。そこにいるの。ねえ。見えないし、ふれることもできないし。それでも、感じる。いたい。つらい。感覚だけが、そこにある。


「はあ。つかれたなあ」


 何言ってるのよ。そのつかれは、わたしのものだから。あなたのじゃないから。なんであなたがつかれてるの。なんでわたしのかわりに。なんで。あなたは、正義の味方か何かなの。


「あれ」


 倒れた。それがわかる。あわてて、探す。見えないし、ふれることもできない。わからない。でも、いま、倒れた。おなかの辺りから、じわじわと何かが流れていく。

 だめ。しなないで。

 声はでなかった。

 生まれてからいちども、喋れたことはない。わたしは声がでない。


「そっか」


 わたしね。ひとりなの。ずっとひとり。声もでないし。誰もわたしに気づかない。それでも、あなたがいてくれたから。寂しくなかったの。ありがとう。ねえ。おねがい。おねがいだから。


「いいね。私にぴったりの」


 死に場所なんて言わないで。

 しなないで。しなないでよ。

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