まだ決めてない。

紀之介

あなたが担当よね?

 朝 テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。世界の終わりまであと七日になりました」と言う。


 先にソファに座っていた<彼女>は、テレビからは離れる <僕>の動きを目で追った。


「これ、あなたが担当よね?」


「─ そうなんだ」


「今回は…どうやって人類を滅ぼすの??」


 <彼女>の隣に、<僕>は腰を降ろす。


「──まだ決めてない」


「え?!」


「前の担当者の仕事が…凄すぎるんだよ……」


「確か前回は、大洪水で滅ぼしたんだっけ?」


「あの偉業と比べられると思うと──」


「プレッシャー?」


「今回の滅亡理由は人間のミスにしろって、上から言われてるんだよねぇ」


「何で?」


「発端が、前回のと同じ<神の怒り>だと…芸がないからって。。。」


----------


「ねえ。核戦争とかは、どう?」


 脚を組んだ<彼女>背中が、ソファにもたれ掛かる。


「これなら、人類の責任でしょ?」


「でも…昨今では、世界を滅ぼす規模で 核を撃ち合う必然性が」


「そんなの、あなたが上手い事──」


「人界への工作は、最小限度に留めろって上から言われてるし」


「大変ねぇ。そんな事まで 考慮しないといけないんだぁ」


----------


「ぶっちゃけ…あと七日で、世界を終わらす都合 つくの?」


 <僕>は、天井を見上げる。


「無理かも」


 指で、<彼女>は自分の鼻の頭を擦った。


「私の友達が、ハルマゲドンの担当なんだけど──」


「?」


「…部署内で、ぼちぼちやるべきじゃないかって話があるんだって」


「え?!」


「持ちかけてみたら? コ・ラ・ボ♪」


「うーん」


「それだと、<人類由来>の言う条件は満たせないけど…そもそも滅亡が出来ないよりは マシでしょ?」


「─ 確かに」


「じゃあ早速、友達と連絡を取らないとだね」


「── この件が片付いたら、何か埋め合わせするよ」


「楽しみにしてるわ♡」


----------


 七日後。


 人類世界は、ハルマゲドンに巻き込まれて滅亡した。。。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

まだ決めてない。 紀之介 @otnknsk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ