文&涼&あかり

 ねぇ、澪様。


 今、あなたはどこで何をしていますか?


 元気でいますか?

 体調はどうですか?


 笑顔でいますか?


 私は現在、澪様が手続きをしてくれた場所ではなく別の福祉施設で働いています。


 少しでも、澪様から卒業できるようにと。


 澪様は両親がいない私たちに、生きることの強さを教えてくれました。


 生きることの大切さを気づかせてくれました。


 執事としては至らぬこともあったかもしれませんが、澪様の傍にいられたことは私たちの誇りです。


 喜びです。


 次、会うことがあれば旅の思い出を聞かせてください。

 お土産話、楽しみにしております。


                 野田文


 






 





拝啓、澪様


 あなたがいなくなって、数年の時がすぎました。


 今、どこで何をしているかなど私は聞きません。


 あなたは空っぽだった私の心を埋めてくれました。


 初めて会った時、傍にいるならこの人だと直感しました。


 あの時の私は澪様の圧倒的な姿に引きつけられました。


 澪様には人を引きつける力があります。


 だから、自然と人が集まってくるのでしょう。


 慕われるのでしょう。


 澪様を主に選んだこと、間違いではなかったと思います。


 自分の直感を素直に信じてよかったと思います。


 妹共々、感謝してもしきれません。


 ありがとうございました。


 いつか、またどこかでお目にかかれることを楽しみにしております。


                               敬具

                                野田涼



                


 





澪様


 私、須田あかりは大学をでて友達と一緒に、企業を立ち上げました。


 あの頼りなくて、守ってもらってばかりだった私が社長ですよ?


 ふふ。


 意外でしょう?


 今の仕事は忙しいけれど楽しいです。


 毎日、充実しています。


 それと、やくざは嫌いと言う言葉は撤回します。


 私は極道の世界は、残酷で冷酷な場所だと思っていました。


 でも、澪様みたいな人たちもいるのだと知りました。


 武器を持たず、人を殺さないというやり方も手段なのだとわかりました。


 歳をとり仕事をリタイアしたら、私は微力ながら白蘭会の意志を引き継いでいこうと思います。


 これからは、澪様に恥じぬように私も生きていきたいと思います。


 胸を張って前に進んでいきます。

 こんな私に希望をくれてありがとうございました。


                             須田あかり



 







 いつか、道が再び交わるまで。


 あなたが本当の笑顔で笑える日がくるまで。


 また、隣で歩く日がくるまで。


 信じて待っております。


 私たちは澪様がただいま、と言える場所を作って待っております。


 再会を心待ちにしております。


 それは、文、涼、あかり、舜がいつかまた澪に会えると信じて心の中でかけた言葉でもあった。


 涼、文、あかり、舜の耳にはあの時と変わらず、白蘭会の――本橋家の家紋のピアスが光っていた。

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下弦の月 風海 @kazami1986

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