なでしこの君へ

ふわり

なでしこの君へ

キミ:お待たせしました。待たせてしまってごめんなさい。浴衣着るのに時間かかっちゃって…


勇:いえ、大丈夫ですよ。待ってる時間も楽しいですから(笑)


キミ:そんな…からかって…(はにかみながら)


勇:さ、行きましょうか?


キミ:はい。

 

 (虫の声)


勇:あの…浴衣、似合ってますね。


キミ:…ほんとですか?良かった!ありがとうございます。


勇:とても美しいですよ。


キミ:そんなこと言ってくれるの、勇さんだけですよ。


勇:そんなことないですよ。キミさん、綺麗だから…


キミ:きゃっ!(つまずいて転びそうになる)


勇:危ない!(転びそうになるキミを咄嗟に抱きかかえながら)

大丈夫ですか?


キミ:す、すみません…! ありがとうございます。大丈夫です。


勇:あ…すみません…、つい…。あの…良かったら、手、繋ぎませんか?


キミ: はい…(照れながら)


 (お祭りの音)


勇:一回りしてみましょうか。


キミ:はい。


勇:気になったお店があったら遠慮なく言ってくださいね。


キミ:はい。ありがとうございます。


勇:なんだか賑やかですね。あっちに行ってみましょうか?


キミ:そうですね!なんでしょうね?


勇:あ…!猿回しですよ!ほら!


勇:見えますか?


キミ:はい!見えます!わぁ、すごい!

あんなに上手に回って!


勇:あはは。ほんとすごいですね!

うまいもんだなー。


キミ:かわいいですね!お猿さん、初めて観ました(笑)


勇:僕もですよ!観れて良かった!


(間)


勇:ついでに参拝して行きましょうか?


キミ:そうですね。行きましょう。


(神社の鈴を鳴らす)

(二人とも柏手を打つ)


勇:じゃ、夜店、回りましょうか。どこ行きたいですか?


キミ:そうですね…金魚すくい、なんてどうでしょう?


勇:良いですね!やりましょう!


キミ:うふふ。金魚すくい、得意なんですか?


勇:まぁ、見ててくださいよ。


勇:すいませーん。金魚すくい、一回!


キミ:頑張ってください!


勇:よぉ~し。キミさん、どれが良いですか?


キミ:では、あの赤い子を…


勇:承知しました!では…


(バシャッ)


勇:あぁ…!逃げられた!


キミ:あはは。難しいですねぇ。


勇:すみません、れなくて…


キミ:いえ…良いんですよ。あの…私もやってみてもよろしいですか?


勇:もちろんです!ぜひ!


キミ:はい。なんだか緊張しますね。


勇:金魚すくい、初めてですか?


キミ:ふふ。一度だけやったことあるんですよ。


勇:頑張ってください!


キミ:はい…!(間)よいしょっ…!


勇:わ!捕れた!すごい!すごい!キミさん、すごいですよ!


キミ:うふふ。私もびっくりしてます(笑)


勇・キミ:(二人で笑う)



勇:かわいいのが捕れて良かったですね。 


キミ:はい。あ…うちに金魚鉢、なかったんでした。

明日買いに行きます。


勇:明日は一緒に行けませんが、今度見に行っても良いですか?


キミ:え…。はい…いつでもいらしてください。(はにかみながら)


勇:他に何か欲しいものありますか?


キミ:そうですね…あの…飴細工が気になります。


勇:良いですね!買いましょう!


キミ:ありがとうございます。あの…勇さんもお好きなもの買ってくださいね。


勇:あはは。ありがとうございます。じゃあ、僕は団子を食べようかな。


(間)


勇:そろそろ帰りましょうか?


キミ:そうですね…もう遅いですもんね。


勇:あ…ちょっと待ってて下さい。


(勇は何やら買いに行った)


勇:ほら、これ!


キミ:あ…なでしこ…


勇:今日は曇ってて月が見えないから、夜道は危ないかと思って。

そしたら、キミさんの浴衣の柄と同じ、なでしこの柄があったから。


キミ:素敵なちょうちんですね。こんな柄があるなんて。


勇:一目惚れして買ってしまいました(笑)


キミ:まぁ!(笑)


勇:一目惚れはなでしこだけじゃないんですが…(独り言のように呟く)


キミ:え…?


勇:あの…もう少しつきあってもらっても良いですか?


キミ:え…?


勇:今日なら見れるかもしれないから…見せたいものがあるんですよ。


キミ: (不思議そうに)はい…


勇:そう遠くないので、安心してください。


キミ:はい。勇さんを信頼してますから。(間)


キミ:あの…今日はありがとうございました。楽しかったです。


勇:それなら良かった!こちらこそ、ありがとうございました。


キミ:あの…猿回し、初めて観ました!


勇:僕もですよ!一緒に観れて良かった!


キミ:お猿さん、かわいかったです!

ふふ。あのお猿さん、なんだか勇さんに似てませんでした?(笑)


勇:えぇ?!似てましたか?なんだか恥ずかしいなぁ(笑)


勇・キミ:(二人で笑う)


(間)


勇:もうすぐ着きますよ。川のそばなので、足元、気をつけてくださいね。


キミ:川…?はい…


(間)


勇:着きました!この辺で見れるはず…

ふっ(ちょうちんの火を吹き消す)

あ!いた!あそこ…!


キミ:え…?


勇:ほら、あそこをよく見て。


キミ:あ…!蛍?光った!わぁ~、すごい!

あ!見て!こっちにも!綺麗!


勇:今日はたくさん出てますね。運が良い。


キミ:え…?


勇:天候によっては見れないんですよ。蛍は蒸し暑くて風のない日に飛ぶんです。

それも月の出ていない闇夜に。昼間は風があったから心配でしたが、止んで良かった。


キミ:そうなんですね!勇さん、物知り!


勇:蛍ってどうして光るか知ってますか?


キミ:いえ…どうしてなんですか?


勇:オスが点灯しながら飛ぶのは、メスへの求愛なんですよ。

メスは葉の上で光って居場所を知らせているんです。


キミ:すごい!神秘的!


勇:ですよね!短い命だから、必死なのかもしれませんね。


キミ:そうかもしれませんね。

あ…そういえば、さっき神様に、何をお願いしたんですか?


勇:あ…いや…その…キミさんは?


キミ:私は秘密です(笑)


勇:ずるいな~(笑)


キミ:うふふ(笑)



勇:あの…今日ここに誘ったのは、実は伝えたいことがあって…


キミ:え…?


勇:実はさっきの願い事は…あの…良かったら僕と…おつきあいしていただけませんか?


キミ:(ちょっと驚きながら)え?!(間)はい…。私なんかでよろしければ、よろしくお願いします。


勇:良かった!キミさんじゃなきゃ誘ってません。


キミ:ありがとうございます。あの…びっくりして、心臓が止まりそうです。


勇:手、繋いでますから、安心してください。


キミ:はい…。

あの…私もずっと前から、勇さんのこと…好きでした…。


勇:来年もまた、蛍、見に来ましょうね。再来年も、その次の年も。


キミ:はい…!



勇N:蛍の光が、二人を優しく包んでいた。


ー完結

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