小学校六年生の時に、祖母の家に帰省していて留守番中のカナが出会ったのは、肩くらいまでの髪を一つにまとめた、オレンジのアロハにハーフパンツという何やら怪しい男性。ところがよくよく見ると、その顔に見覚えがある気がして——?
少し謎めいた叔父さんのマナちゃんに、カナにとっては年頃の大人への憧れと、家族でも他人でもないその距離感のおかげで誰にも話せないようなことも相談できる関係になっていきます。
ところが、それは彼の素性が明らかになることで、一度断ち切られてしまいます。やがて、とあることをきっかけに、マナちゃんの本当の姿が明らかになっていき……。
最後のマナちゃんの「嘘」に思わず涙がこぼれてしまいました。
タイトルの「著作権フリーおじさん」とはどういう意味なのか。子供時代の少し苦しい閉塞感や、その向こうにある優しい叔父さんの眼差し、大人になるということなど、いろいろな想いの詰まった切なくも温かい物語。
後日譚も合わせてぜひ読んでみていただきたいおすすめの一作です。
小学生のカナの前に現れた叔父の『マナちゃん』。
モデルを名乗る彼は、それまで周囲にいたどんな大人とも違う、
いわゆる悪い大人だった。
作品の、子供から見た大人の世界を通して見える、
大人が子供にどう見られたいかというささやかな夢と虚構。
そこに垣間見えるごく自然なマナちゃんのやさしさが心地よく、
彼の生き方にカナと同じようにぼんやりとした憧れを向けてしまう。
夢を見る子供と、夢を見続けて破れた大人。だからマナちゃんは嘘を付く。
でも、何者になれなくても、何者かになれるかもしれない。
『著作権フリーおじさん』という生き方が
マナちゃんにもたらしたモノが見えるラストも
救いのようで読了感も爽やかで良い。