ミステリー好きには是非読んでいただきたい作品。

【簡単なあらすじ】
ジャンル:ミステリー
初めの事件は、主人公が友人である探偵に誘われ、ある大手のメーカー社長から個人的なパーティーへ参加するため岬に建てられた潮騒館に訪れることとなった。そこに集まった関連性のなさそうな職業の人々。しかし意外な繋がりがあったのだ。主役が遅くなると連絡があり、一泊することになった彼らだったが、事件が起きてしまい……?!

【物語の始まりは】
ガス欠になりガソリンスタンドに寄る場面から始まっていく。
どうやらある事件で出逢った大手家具メーカーの三代目社長(元)から引退パーティに呼ばれ岬に建てられた潮騒館に向かう途中のことであった。
そのパーティに呼ばれたのは職種の違う人々。初対面であり彼らに関係性はなさそうに思えたのだが……。

【舞台や世界観、方向性】
現代、もしくは現実世界。確かな時代設定は分からないが、近現代から現代の間だと思われる。論理的に謎が解かれていき、驚きの展開も用意されている。
その中で、一般的な刑事もの、探偵もので感じることのできない”新しい”部分が存在し、その考え方は”人として推奨する”ことはできないが、共感してしまう。むしろ論理道徳面において、推奨することができないと言った方が正しいかも知れない。(例えば、どんなに犯人に共感で来たり苦しみを理解できても、殺人や自殺などは推奨できないという意味合いである)

【主人公と登場人物について】
主人公は歴史小説家であり、友人が探偵をしている。彼に同行している時に三度ほど事件に巻き込まれた過去があるようだ。
主人公の友人である探偵の砂橋は負けず嫌いなのか、ゲームをすると彼が五回勝つまで解放してくれないようだ。そんなこともあってか、二人のやり取りはコミカルで面白い部分もある。

【物語について】
潮騒館殺人事件について。
主人公達が個人的なパーティに出席するため潮騒館に到着すると、既に先客が数名いた。自分たちで最後かと思われたが、パーティの主催者はまだ到着しておらず、客もまだ一名到着していなかった。彼らは待っている間、娯楽室へ行くことに。ここで、主人公達以外の客がどんな人物なのか明かされていく。
全体にとても読みやすい作品である。
主催者が来ないまま、彼らは一夜を明かすことに。仲が良いとまではいかずとも、招待客が打ち解けたように思えた最中、ある事件が発生する。実質的に彼らは潮騒館に閉じ込められたような形となった。誰が犯人かもわからず、互いに疑う状況へと。そこに殺人事件が発生するのであった。果たして犯人は誰なのだろうか?

【良い点(箇条書き)】
・意外性の詰まった物語。第一の事件では、意外な人が事件に巻き込まれ、想定外のことばかり起こる。驚きの連続!
・個人的に主人公の性格が好きである。
・探偵と主人公のキャラ設定がとても良いと感じた。主人公はとても真面目であり、探偵の方は少し軽い部分(楽観的)がある為、事件ものではあるがコミカルな場面もある。その為、抑揚のある物語である。
・事件の解決の段になると、いろんなところに伏線が散りばめられていたことに気づく。本格ミステリー。構成も巧い。
・読み応えのあるミステリーであり、読みやすく流れるように展開されていく。
・誰が何のために、どんな理由で事件を起こしたのか? 設定がしっかりしている為、納得できる。

【備考(補足)】24ページまで拝読(潮騒館殺人事件、完読)
【見どころ】
世の中は綺麗ごとだけでは済まされない。第一話である潮騒館殺人事件を読んでそう感じた。今まで読んだり観たりしたことのあるミステリーの中では、少し変わった部分を持つ物語だが、後味がとても良いと感じた。大抵のミステリーでは犯人にはしっかりとした目的を意識があって犯す犯罪であるのに、何となくモヤモヤする。犯罪は許されることではないが、犯人に同情してしまうためだ。恐らくそういう物語でのメッセージは”どんな理由があっても、復讐や仕返しはダメ”ということなのだろうが。この物語では少しメッセージが違うように感じる。確かに犯罪は許されることではないし推奨されているわけではが、なんとなくスッキリするのである。それは”綺麗ごと”だけで成り立っているわけではないからではないかと感じた。
事件や解決に至るまでの構成も驚きや意外性があり、読み応えも充分。ミステリー好きには是非おススメしたい作品である。あなたもお手に取られてみてはいかがでしょうか? おススメですよ。