第3話 甲

「我々銀河連邦は、諸君らを知的生命体基準『甲』への合格を認める」

 オラ達がデュラニウム合金製のプレートを、謎の『銀河連邦』なる組織から受け取ってから、どれだけ経つやろうか?

 三度目の接触や。今度は、ラチナム合金製のプレートを渡してきよった。

 こっちとら、そんな組織がおったこと、そんな認定書をもらったこと、すっかり忘れてまったがな。

 だっておそがい怖い

 光の速さを超え、ワープ技術を手にしたのはええが、周りには気味の悪い知的生命体ばっか。

 そんで閉じこもることにした。

 それは苦労した。自分達の太陽系自体を遮蔽した。そこに何もないようにするのに、どれだけ苦労したか。

 それだけでは、気持ち悪い知的生命体に見つかってまう。

 監視網を広げた。オラ達の気配を悟られんよう。情報操作や尾行も欠かせん。

 奴等は『乙認定連盟』なんてものを作っとったが、監視を続けとると非道い組織や。

 結局は出し抜こうとする他のものを監視しあっとる。裏取引や賄賂も当たり前。そんな組織がいつまで続くか、見物みものであった。

 何せ、他の知的生命体と一切、接触をせなんだでだ。そんで、生き残ったのかもしれん。


 カドニウムの転送装置。


 すべてはとある知的生命体の発明品が引き金や。使い方を問題視。それに伴う裏取引やら何やら……。

 オラ達もこっそり使わせてもらっとるし、それ以外の技術もコピーさせてもらっとったが、知的生命体同士の戦争になるとは思わなんだ。


 まあ、オラ達の新しい娯楽といってええかもしれん。その頃には、オラ達も異様な姿の奴等にもなれてきた。その程度ぐらいしか、オラ達は考えなかった。

 知的生命体の中での葛藤や人生劇、愛やら何やら……おそがい怖い格好をしていても、連中にだって感情はあったんや。やはり血肉を奪い合う戦いは最高の娯楽やろ。

 オラ達は培った遮蔽技術で高みの見物。そんで、現在のとこ生き残っとる。

 乙認定連盟に所属しとった知的生命体達など、ほとんどが壊滅的被害を被っとるがな。自星を破壊された知的生命体もいれば、太陽を破壊された者もおる。


 知的生命体同士、関わりを持つべきだ。


 そんなことをいっていた者も昔おったが、結果はこれや。

 孤立政策がオラ達を救った……そういうことなのやろう。


 ところで、銀河連邦なる組織が現れたのは何のためや?


 前回の接触の時は、プレートを渡したら、ちゃっと帰ってまった。だが、今回は珍しゅう居座っとる。

 こちらからの質問をするのは、オラ達が取っとった孤立政策に反することや。だが、オラ達だって、知的生命体や。『好奇心』は失ってはいいへん。それがあるでこそ、徹底して他の知的生命体を監視しとったのや。

「知的生命体基準ってなんや?」

 銀河連邦ヤッコさんに、簡潔かつ簡単な質問をした。

 滅んでまった乙認定連盟のように、オラ達はなりたくない。

 結局これで「銀河連邦に入会できる」などと言われたら、今までの孤立政策は無駄になってまう。

「――銀河連邦? ああ……我々がでっち上げたもっともらしい組織だ。知的生命体基準なんて、我々が勝手に決めて、色々の星にばらまいた。

 諸君達同様、我々も面倒なことはゴメンだ。『甲』の基準は、他の知的生命体に存在を知られずに監視できる技術を有すること。これで諸君は、我々と同等の技術を手に入れたこととなった」

「何のためや?」

「目標を与えれば、諸君らも頑張れるだろ? 接触を極力抑えて、監視に専念すれば勝手に動いてくれる。この銀河では乙認定連盟、なんてモノを作ってくれたじゃないか」

 まあ、乙認定連盟の崩壊劇は楽しませてもろおた。

 そこからオラ達の娯楽文化も刺激を受けて、どんどん新しいモノが産まれている。

「どうだろう。諸君らの持つ、面白そうな娯楽ライブラリを交換しないかい?

 もちろん、こちらも他の銀河でライブラリを提供する。他の知的生命体は、娯楽として見るのが一番だろ?」

 オラ達は答えを考えた。他の星のことも知らたいが……結論は、決まっている。


「それはお断りや。帰ってくれ!」

「そうか――」


 少し寂しそうに銀河連邦を名乗っていた知的生命体は去って行った。


 しかし、オラ達は啖呵を切ったのはいいものの……そろそろ、オラ達の娯楽のストックも切れかかっているのは確かや。

 どうしたものか……まだこの銀河系には、これから発展する知的生命体が、おるかも知れへん。そいつらを煽るか? まあ居なくても、別の銀河系ならおるやろ。


 銀河連合とでも名乗って、接触したろうか――



〈了〉

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知的生命体への合格プレート 大月クマ @smurakam1978

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