転生、出来ませんでした。
@maro_coco
第1話
「おめでとうございます!あなたは天国に送られました!」
目が覚めたら巨乳で可愛いおねーちゃんが目の前に現れ、いきなり訳の分からないことを言い出した。
唐突の話で何がなんだか分からない。天国??
「ま、待って。おれ死んだの?てか、あなた誰ですか?」
え、これが普通の反応だよね?
「はい。拓也様は大学の帰り、赤信号にもかかわらず渡っていた小さなお子様を庇ってトラックに轢かれました。あの勇姿はとても素晴らしいものでしたよ。拓也様が庇ったお子様も無事親元に帰ることが出来ました。そして、わたくしは第二級天使のサチエルと申します。」
あーー。記憶が蘇ってきました。確かにおれは大学の帰り道に轢かれそうになっていた子供を見かけて、とっさに体が動いた。しかし、その子ごと一緒に歩道に行くつもりが、俺だけが車道内に残ってしまったのか。運がなかったな、おれ。
「あの子が無事ならなによりだよ。でも、サチエルさん。なんでおれが天国なんだ?生前のおれはごく普通な生活をしていた大学生だったんだが......」
「そうですね。拓也様はごく普通の大学生でした。もちろん良いこともたくさんしていましたが、天国行きには少し及びませんでした。ですが、自分の身を犠牲にしてまで他人を助けた点は大変素晴らしいものです。そのため、天国行きとなりました。」
なるほど。確かに最後の人助けは自分史上最大の善だったと思う。
「最後の行動が良かったのか。理解したよ。ところで質問があるんだけど、これって転生とかでは無いの?」
死んだら転生する。大学生の常識だ。おれは死んだら、魔王が人々を困らせているような世界に勇者として転生し、仲間を集めて魔王に挑むような転生ライフを期待していた。
明らかにサチエルさんはキョトンとしている。
「転生?なるものとは異なります。」
「えーー!!まじで!? じゃー、手から炎とか出ないの?? 美人なヒロインといちゃこらするみたいな展開もないの?!」
「そうですね。そのようなことは無いと思われます。」
なんてことだ。一大事だ。おれは天国よりも異世界転生を望んでいたんだぞ。美人なエルフや幼馴染ヒロインとの激アツ展開を望んでいたのにこれは困ったぞ。
「う、うそだと言ってくれよおおおおお」
「で、ですが拓也様!天国はとても素晴らしい場所ですよ!楽しいことがたくさんあります!」
お、天国も割と良い場所?確かに生前では天国は素晴らしい場所ってのが常識だったな。
「天国って何をするんだ、サチエルさん。」
「天国では、何でも出来ます!」
いやいや抽象的すぎだろ!何でもって何だよ。
「もしかして、サチエルさんとイチャイチャ出来ますか?」
「トばしますよ?」
「すみません嘘です。調子に乗りましたごめんなさい。」
綺麗な白長髪の、ザ天使的な容姿からは想像も出来ないような怖い顔をされた。以後気をつけよう。
「と、とにかく。まずは私について来てください。これから拓也様に天国をご案内します!」
このようにしておれの憧れだった異世界ライフとは異なる、天国ライフの幕が上がったのだった。
転生、出来ませんでした。 @maro_coco
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