心と血
バブみ道日丿宮組
お題:気高い躍動 制限時間:15分
心と血
一呼吸。
たったそれだけのこと。
そうだというのに、ぼくは前には進めなかった。進むわけにもいかなかった。
掴めば彼女と同じ空気を吸えるというのに、その手をつかめなかった。
ぼくの中には悪魔がいる。
その悪魔が彼女を殺してしまうかも……いや殺してしまうから、離れなくてはいけない。
自分で自分に嘘をついて去るのはひどく簡単だった。
けど、彼女もたったそれだけの嘘で見限るほどの人間じゃない。
すぐに追手を放ち、ぼくへ近づいてきた。
離れて近づいて、また近づいて離れて。
僕たちの距離は一呼吸。近づいてるようでそうじゃない。
彼女の躍動にぼくはいけない。フレてはいけない。ぼくの手は彼女が思うほど、キレイじゃない。汚れすぎてる。それでも彼女はぼくを求めた。
いけない。それだけはいけない。
彼女には気高い志を持つものだけが残ればいい。
そう判断したなら……あとは削除するだけ。こうすれば、きっと彼女もぼくを諦める。
答えを見つけたあとのぼくは業務的だった。
ナれるということはひどく人間として壊れるから進むのは簡単。自分が手にしたパーツがなにを描くのかわからなくなるまで、ぼくはぼくを殺し続ける。
そうして彼女本人がぼくの目の前に現れた時、ぼくはぼくでなくなってた。
差し伸ばされた手もなんの手か理解できず、熱いものを浴びぼくはただ後悔した。こうなるなら同じ空気を吸えばよかった。
最初からその選択肢を選べばよかった。
「これで一緒だね」
崩れ落ち、力尽きかけた彼女が作った言葉はぼくを包みこむ。
そうしてぼくは彼女を介抱する役目をモッテ、逃走する仕組みを、回路を焼き切った。
心と血 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます