落ちた彼女

バブみ道日丿宮組

お題:不本意な殺人犯 制限時間:15分

落ちた彼女

 やってしまったというときにはすでに遅く、彼女は血に落下してた。

 ビルの屋上から落ちたのだ。おそらく生きてはいない。周りが喧騒になる前にこの場所から離れてーーその後のことは正直いって覚えてない。

 電車に乗って普段どおり帰ったのか、あるいはタクシーを呼んで帰ったのか、もしくは歩いて帰ったのか、それか彼女は生きてたりするのか。

「……」

 ベッドで目を覚ました俺は彼女がいない部屋に違和感を覚えた。でも、もういないのだ。ニュースになってないかとパソコンをつけてサーフィンしてみるが特に出てこなかった。

 フルネーム、飛び降りと検索ワードを絞ってみてもあの現場の情報は1つもでない。

 ならばと、テレビに切り替えてニュース番組をーー見ても彼女につながりそうなものは入ってこなかった。

「……?」

 スマホが突如としてなったので手にとって見れば、メールが来てた。

「えっ……?」

 その送り主は彼女だった。

 意味がわからない。

 確かに彼女は落下したんだ。押した感触が今も残ってる。

 でも……彼女の死体を見たわけじゃない。

 そういえば……ビルの屋上から1フロアに降りた時彼女の姿は見えなかった……気がする。

「っ……」

 ごくりと喉がなった。

 メールには一体何が書いてあるのだろうか。

『よくも殺してくれたな』、『次はお前だ』、『この人でなし!』

 いろんな言葉が頭に浮かんだ。

 考えてるうちにスマホが再びなった。今度はSMSだ。もうこれは彼女が生きてるという以外に答えはない。

 覚悟を決めてスマホを開くと、【今日の朝ごはん】と彼女が毎日送ってくる写真が送られてきてた。

 SMSは今日の午後遊びに行くからという短いものだった。

 背筋が凍りそうになった。

 会う……? 死んだはずの彼女と……?

「……」

 もしかして別人が彼女の復讐者として連絡をよこした……とか?

 会うのは危険かもしれない。かといって彼女本人を強く否定するのは俺がやってしまった事実から逃げることにしかならない。

 決意を決めた俺は、『わかった。掃除して待ってるよ』とSMSを送った。すぐにそれは既読となり、連絡が届いてることを証拠付けた。

 

 そして俺は運命を呪った。

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落ちた彼女 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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