インポスター
きと
インポスター
「
「えっ! ここまでできるなんて、すごいね!」
「はじめてなのに、こんなにできるなんて。なかなかできることじゃないよ」
みんな口々に、俺のことを
でも、それは俺の力じゃない。
周りの人の力を借りて出来たことだし、俺が褒められることじゃない。
たまたま運か良くできたことだし、俺が褒められることじゃない。
俺は、何もしていない。
俺の力を褒めてくれるが、過大評価でしかない。
それでも、他人は言う。
「すごいね」
「流石だね」
やめてくれ。本当にやめてくれ。
俺は、そんなすごい人間じゃないんだ。
今まで、たまたま運が良かったり、人が手伝ってくれただけだ。
責任のある立場を任されても、何もできない。
期待されても、応えられるわけがないのだ。
これ以上、何かを成功させることはできない。
いつか、本当の俺を見破られる。
いつか、必ずミスをする。
どんなに小さなミスでも、その時が訪れたら、みんな俺を
あんなに期待したのにと。
あれだけできていたのにと。
それとも、そうでもないと、みんな本当の俺を見てくれないのか?
そんな不安など知るはずもない、他人は言う。
「すごいね」
「流石だね」
俺は、平凡な人間なのだ。
今まで生きてきて、特に何か大きなことを
勉強だってスポーツだって、できるわけじゃない。
こんなこと、みんなにだってすぐにできることだ。
俺が特別なわけじゃない。そんなこと、自分が一番分かっている。
褒められた時、そんなすごいことではないと言っても。
他人は、
「
なんてことを言う。
こちらから言わせれば、謙虚なのではなく本心を
そして他人は、また繰り返す。
「すごいね」
「流石だね」
その言葉は、他人からすれば暖かな心地よい言葉なのだろう。
でも、俺にとっては冷たく
他人は、自覚なしにそのナイフで俺を
他人は、自身がそんなことをしているとは思っていないだろう。
何故、他人は俺にそんなことをするのだろうか?
いや、俺に原因があるのか?
俺は、運や他人の力だけで、成功をおさめたように振る舞っている。
そんな
「すごいね」
「流石だね」
他人からの言葉のナイフは、何があっても止まらない。
思い切って、環境を大きく変えたこともあるが、それでも変わらない。
詐欺師の俺は、また上手く人を騙してしまう。
他人の期待が足枷しかならず。
他人の賞賛が刃物にしかならず。
詐欺師の俺は、いったいどれだけ罰を与えられれば、許されるのだろうか?
俺は、どうしてこうなってしまったんだ?
俺は、いつからこんな思いをするようになった?
俺は、何故詐欺師になってしまったんだ?
インポスター きと @kito72
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