音楽の間にあるもの
バブみ道日丿宮組
お題:求めていたのは曲 制限時間:15分
音楽の間にあるもの
「どうやって彼の歌を防げばいいの?」
「歌は耳に入るからね、鼓膜破るとかな?」
親友の相談に物騒な話をふっかけてくるのは、どうしてだろうか。アイディアを求めたのはこっちだけど、それにしてもやり方が……。
「それじゃ聞こえなくなっちゃうじゃないの……」
「そうしなきゃ聞こえちゃうんだし、かなり有効な手じゃない?」
有効な手だとしても……さすがに鼓膜を破る勇気はない。できる人は、アイスピックとか、針とかでぶっ刺したりするのだろう……か? いや……いやいや勇気あっても普通はしない。しないよね?
「じゃぁ防音施設に彼だけ閉じ込めるとか?」
「二人で出かけるんだから1人にするのは結構難しいよ。トイレとかで席を外すことはできても永久に離れることはできない」
デートプランからカラオケを外せばいおそらくいいのだろうけど、そうしたら彼は怒る。『どうして俺の歌を聞いてくれないのか』と。
美声であれば喜んで聞いちゃう。まっ彼が音痴なのはもう確定だからなんもいえない。
「じゃぁ別れちゃうのも手じゃない?」
「別れるか……なるほどね」
考えたこともなかった。
彼とは小学校から一緒で、親友と三人一緒の幼馴染だった。そんな中で生まれた愛が私と彼。親友はよき相談役として私たちの側にい続けた。
「距離を離してみるのもありといえばありよ。あなたたち近すぎて見えてない部分あるだろうし」
真剣な瞳を向けられた。
そうなのかな。彼に近すぎたのかな。
「……そっちからみてどうなの?」
「うーん、清音なあなたと汚音の彼はいいハーモニーを奏でるのは無理ね」
「そっか」
「彼があなたに歌を聞かせたいのは……おそらくあなたの才能である音楽についていきたいって気持ちがあるんだろうと思うよ。素敵な曲を作ってネットの反響もいいし、負けたくないっていう気持ちもあるんだろうね」
確かに私が作る音楽はネットでの反響はいいし、コンサートの課題曲として使われたりしてる。それに追いつこうとする……ってどうなんだろう。
彼が音楽を知ろうとしてそういうことをしてるってならいいことかもしれない。けど、無理にそうしてるならやめてほしい。
所詮……私がやってることは趣味の範疇でしかない。そんな私に付き合う必要なんてない。ただの時間の無駄。
「考えは少しできた?」
「うん、彼に無駄な時間を過ごしてほしくない」
ならと親友は相槌。
「別れる?」
「一旦そうしてみようと思う。自分の環境も見直してみたいとも思ったし」
そうと親友は私の肩を優しく叩いた。
それからメールで別れの話をしてみたのだけど、意外に彼はあっさりと受け入れた。
私が悩んでた……だけなのかな? と、少し胸に何かが引っかかった。
音楽の間にあるもの バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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