少女の王子様
バブみ道日丿宮組
お題:少女の電話 制限時間:15分
少女の王子様
「ねぇ迎えに来てくれない」
電話ボックスの中、少女が問う。
「えっと雨降ってるからかな?」
その話し相手は幼馴染の少年。声変わりを迎えてるのにもかかわらず女性のように声は高かった。少女よりも少女らしい声ともいえた。
「そう。学校帰りに降られちゃったの。君早く帰っちゃってるんだもの、ひどいよ」
少女は頬を膨らませる。その様子は少年に見えることはないが、きっとそうしてるのだろうと心の中で想像してた。
「帰宅部だからね。予報も雨の確率が高いって言ってったし」
「だったら、傘持ってきて」
「うーん……めんどくさい」
嫌々しい声の音色。
「それがたった1人の幼馴染の言う台詞? ここは喜んで行かしてもらいます、でしょ?」
少女が熱弁する中、雨の音が少年の耳に届く。
「こっちは降ってないから、通り雨かもしれないよ」
「それまでここで待機してろっていうの?」
あんまりだわと少女は嘆く。
「わかった、わかった。迎えに行けばいいんでしょ」
「そう。はじめからそういえばいいのよ。どうせ今日もうちでご飯食べるんでしょ? なら、私の家に入りやすいでしょ」
少年は少女の家でご飯を食べるのがいつものこと。両親が共働きでほとんど家に帰ってこない少年の家は、幼馴染ともあり隣に住んでる少女の家とは家族ぐるみの付き合い。夕食、朝食はいつも一緒だった。
「別に入りにくくはないよ。部屋にだって何回も入ってるじゃないか」
「そうね、そうね。いつも私の下着物色してるものね」
「ひどい言いようだな。しまってないのがいけないんだろう。まぁいいや。数分でそっちいくから動かないでね」
携帯持ってないだからと少年は電話を切る間際でこぼす。
少年との会話を終えると、少女は電話ボックスでしゃがみ込む。向かい側にいる人物には下着が見える覚悟であったが、少女は気にしなかった。
迎えにくるといった少年へのご褒美として考えたからだ。
とはいえ、関係のない人に見せるわけにもいかないので、バッグで見えないように工作する。
「よし……はやくこないかな」
数分しかないならやることもない。そう思って少女は少年がどんな服装でやってくるかを妄想することにした。
執事服、学生服、コスプレ、私服etc。
頭にいくつも浮かんでは消えた。
そして一番着てほしい王子服を少女は思い浮かべる。
自分の王子様が、困ったお姫様を助けに来る。
そんなメルヘン世界……があればな、と少女は苦悩してると、
「おまたせ」
「遅い!」
私服姿の少年がやってきたのであった。
少女の王子様 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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