帰国したものの苦しみ

バブみ道日丿宮組

お題:冬の闇 制限時間:15分

帰国したものの苦しみ

 誰しもが心に黒い刃を持ってる。

 それは時として誰かを傷つけ、二度と戻らない痕跡を残す。僕はされる側だったから、する方の気持ちはわからない。

 今受けてるのはそんな闇。

「お前帰国子女だからって生意気なんだよ」

「……」

 叩かれるのは日常となってた。

 この国に帰ってきてからというもののこんなことばかりだ。

 人と違う髪、人と違う瞳、人と違う訛り。

 たったそれだけで空気は冬のように寒くなる。友だちだってうまく作れていない。もっともできたとしてもこんな場所に呼びたくない。

「なぁなぁひんむいちゃおうぜ。こいついい身体してて気になってんだ」

「やっちゃう? やっちゃうか?」

「でも、バレたら停学じゃすまないぜ?」

「おしいなぁ」

 する側が僕を卑しい瞳で見つめてくる。

 ゾッとした。

 これが同じ人なのかと。まるで獣が獲物を狩るような空気だ。

「触るぐらいなら平気だろう」

「そうだな」

「じゃぁ俺左な」

「オレはふとももがいいかな」

 たくさんの手が迫った。

「や、やめて!」

 思わず声が漏れた。

 する側がにやりと口端をあげた。

 否定することは虚しく、先端の接触を許してしまった。

「いいなこれ」

「いつまでも揉んでいてぇ」

 嫌な感触が続くなか、僕は視線を反らすぐらいの抵抗しかできなかった。

 される側はされるがままになるしかない。

 助けを求めようとしてもここはゴミ捨て場。運良く生徒がゴミを捨てに来ない限り誰も来ない。穴場という穴場だった。

 僕は弱い。

「こいつ感じてんじゃね?」

「そうか? いつもこんな顔だろ」

 笑い声が響く。

 何回か触って満足したのか、

「今日はこれぐらいにしておいてやる」

「明日へんな色目つかったらわかってるな?」

「ひん剥くのもいいかもな」

「やめとけよ、変な病気移っちますぜ?」

 する側は去った。

 僕は乱れた服を直しながら泣いた。

 でも、誰も来ない。


 この国にきたのは間違ってた。

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帰国したものの苦しみ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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