課金

バブみ道日丿宮組

お題:朝の借金 制限時間:15分

課金

 いくらお金があっても足りない。

 毎日1万円をガチャにつぎ込まなきゃなんか精神的に落ち着かない。

 足りない部分はどこからとってくればいいわけで、朝の通学時間はまさに狩場。密着できれば満員電車のおかげもあってするすると獲物を盗み取ることができる。

 だというのに……だというのに。

「ねぇ聞いてる?」

 その相手が幼馴染だとは思いもしなかった。

「……聞いてる」

 電車を降りて、通学路、並んで学校へ向かってるわけだが、彼女の表情は硬い。

「あれはねセクハラっていうんだよ? 私じゃなかったらおまわりさんのお世話になってたんだからね」

「う、うん」

 セクハラしようと思ったわけじゃないが、黙ってたほうが今はいい。彼女を怒らせるとなにをされるかわかったもんじゃない。

「女の子の身体に興味持つのはいいけど、私以外にしちゃダメだよ」

「なんで?」

「そりゃ私が大好きだから! 他の子にデレデレしてるなんて許さないよ」

 なんだそりゃ。昨今流行りのヤンデレか?

 いや……幼馴染の性格上そうなったというやつかもしれない。幼稚園の頃から僕の隣に居続けた彼女。つまりは僕が隣にいるのが当たり前という思考が生まれてもなにもおかしくない。

「怖いな。でも、どうしても欲しかったんだ」

「そ、そう」

 僕の言葉に彼女が急に頬を染め出す。

「じゃ、じゃぁ今度家に来たときに見せてあげるから」

「見せてほしんじゃなくて、欲しいんだけど」

 ガチャのためにお金が。

「そんなにぱんつみたいの?」

「えっ……ぱんつはみたくないよ?」

 彼女の瞳が大きく開く。

「じゃぁ……なにが欲しいの?」

「お金。ガチャしたい」

 大きなため息が聞こえた。

「また課金しちゃったの?」

「うん、面白いから」

 ため息がさらに。

「ダメじゃない。お母さんと約束してたんでしょ?」

「約束は約束だよ。守れない可能性はある」

 実際には守ってないというか、守る気もなかったけど。

「もうーしかたないなぁ。いくら欲しいの?」

 彼女は腕を組み、右の瞳を閉じた。

「1万円かな。そうすれば天井に届くから」

 そうといって、彼女はスクールバックを開き、財布を取り出した。

「じゃぁ貸しておいてあげる」

「いいの!?」

 一万円札を掴み取ろうとしたら、右手が中を舞った。彼女が一万円札を引っ込めたからだ。

「約束できる? 今度私とデートしてくれるって」

「うん、うん、できる。できる。できるから貸してください」

 こうして僕は一番金を借りてはいけない人物から借りてしまうのであった……。

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課金 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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