なんでもできるがなんでもできない

バブみ道日丿宮組

お題:スポーツの秀才 制限時間:15分

なんでもできるがなんでもできない

 少年には才能があった。

 それは誰よりも順応できる力。

 つまりスポーツでいえば最初のうちは強いが、最後には最弱となる。

 そんな状態だったから、少年は消化不良気味だった。

 自分には何でもできるが、何も強くはないと。

「……」

 今日もクラスでスポーツ特待生がちやほやされる。

 つい先週にあった大会で優勝したのだからわからなくもない。そしてイケメンにつき人気も急上昇。日陰者となった自分とは大違いだ、と少年は心の中で愚痴る。

「彼凄いよね」

「凄いのは確かだよ」

 少年に声をかけたのは一人の少女。いわゆる少年の幼馴染である。

「君も頑張ればあぁなれるんじゃない?」

「できないのはわかってるだろ。僕じゃぁ足元にも及ばないよ」

 深い溜め息が少年から漏らし、頭を下げる。

「確かにさ、君は平均以上の凄さはないよ」

 でもと一呼吸。

「なんでもできない人よりは十分すぎる才能だと思うよ。私運動苦手でスポーツなんてできないし」

「できてもいいことないからできないほうが羨ましいよ」

 その言葉にぷくぅと頬をふくらませる少女。

「どうしてそんなこというかなぁ? 私は君が色々頑張ってるの知ってるんだからね」

 少年が顔を上げ、少女を見つめる。

「もう少し頑張ってみようよ。一応君も特待生なんだから」

「そうかな……負けてばっかなのにいいのかな?」

「スポーツは勝つことだけが全てじゃないよ。まぁ……勝つことは大事かもしれないけど、君が活躍してなくても特待生が消えてないでしょ? それは学校や国が認めてる証拠だよ。こないだだって、新しい技術提供してたでしょ」

 少年の才能はなんでもできる。それは難しいスポーツであっても、難解な技術であってもだ。少年のおかげで解決の糸口を掴んだ技術も多々ある。

 スポーツの秀才になれはなくても、大きな一歩を踏める人間ではある。そのことを少女は知ってる。

「だから、もう少し頑張ってみよう」

 少女の言葉に、少年は頷き笑った。

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なんでもできるがなんでもできない バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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