宇宙人による地球人の観察記録1

コウキシャウト

宇宙人による地球人の観察記録1

我々の惑星の宇宙人は地球人と変わらぬ外見を持ち、調査の為に地球人に紛れ地球で普通に生活している。ここ十年極東に位置するニホンという国では年季の入ったハリウッドスターを宇宙人と設定し、普通に生活する彼の内面をナレーションで表現するコーヒーの「シーエム」がテレビで流れているようだが、あれは完全に我々の真似としか言いようがない。以下は、我々が生活する中で気付いた地球人の特徴等について簡単に書いたものだ。


地球には肌が白、黒、黄色等の人間が住んでいるが、なぜか彼らはお互いを尊重しているフリをしながら、人間をその色で分け、互いに言葉や暴力で傷つけ合う行為を何百年も続けている。そして法律やモラルというものに価値を置き、それに従いながら生きているのにもかかわらず自らそれを破っている姿は時に滑稽で、そんなニュースを聞く度に我々は人間による自作自演のパフォーマンスを見せられている気分になる。肌の色はあくまで表面的なものであり、内側には同じ赤い色の血が流れている事実を考えれば、人間による「種類分け」はそこまで意味を成さないように思えてくる。


そして興味深いのが、地球人の我々の扱い方、表現。彼らは架空の物語を映画、ドラマ、本といった媒体で鑑賞するのが好きで、時に我々も物語の中で頻繁に登場する。しかし残念ながら我々を肯定的に、且つ自然に描いた物語は驚くほど少なく、何故か我々の外見はイカやタコと呼ばれる海洋生物にインスピレーションを受けたものだったり、頭が大きく黒目が大きいものに偏っており、声質は極東・ニホンの「カシュ」というカテゴリーで有名だというユミ・マツトウヤの声を更に潰したような所謂「ダミゴエ」(ちなみにこのカシュの顔を見ると、何故か親近感を覚えるのが不思議だ)、人間の言葉を喋る場合ニホン語では常にカタカナ表記、大抵は銀のハイザラを二つ重ねたような円盤や宇宙船に乗り地球を侵略、それを地球人が退治する・・というパターンが多く散見される。ここで我々は地球人の矛盾にも気付く。


イカやタコが邪悪な存在として描かれている背景を考えれば地球人はそれら海洋生物を嫌悪しているとも推測出来るのだが、何故か地中海周辺の国ではそれらを人間の髪を太くしたような物体の束と共に食したり、極東のニホンではそれらを生で食し、タコに関しては地球のような丸い物体の中にタコの一部を埋めた後、墨のようなものを垂らして食したり、エイというイカに似た海洋生物に関しては「イチバ」という海近辺の場所で彼らが畏怖する映画の中で描かれる我々のようなビジュアルの状態で食物として売られる等嫌悪するどころかむしろ好まれているのだ。


まだまだ面白い事実が有る。シワが少なく、地球生息期間がまだ短い、彼らの言葉で言えば「ワカイ」と呼ばれる類の女性の一部は目を大きくすること、黒目を大きくすることに拘りが有るらしく、時に透明のアクリルやシリコン状のものを目の中に入れるという痛そうな行為を平気で行ったり、肌身離さず持っている様子から地球人が人間以上に愛情を注いでいるであろう板状の機械に「アプリ」というものを導入することで自らの顔を修正する行為を行っている(最近は男性もそれらを行ったり、時に修正という枠をクロスオーバーし、アゴが凶器と言わんばかりに尖ってもいる)。極東「ニホン」の女性は映画やフィクションの作られた目や黒目が大きい我々の姿を見て「キモイ」という容易に対象を否定する言葉を頻繁に用いているが、何故かそのフィクションに登場する我々に好んで少しずつ近付いている姿は実に滑稽である。


人間は色々な意味で面白い。まだまだ観察は続けるつもりだ。

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