【イマドキの魔法】。それは今をドキドキする魔法。のこと。
日向大地のお気に入りの洋菓子店、来夢は、魔法使いのミントが店主を勤める素敵なお店。
言いたいことが言えない口下手な大地ですが、ミントをはじめとする来夢の人達とは仲良く、一緒にいると楽しいです。
中学校では人間関係が上手くいかずに悩むこともあるけれど。ミントが言っていた言葉、「今をドキドキすることで、変えていけることがある」を胸に少しずつ心に変化が見られていく。
火を出したり雨を降らせたりするだけが魔法じゃない。心のあり方を変えることで、人は少しずつ変わっていく。それこそが世界を変える事だってできる【イマドキの魔法】なのです。
このお話を読んで思ったのは、登場人物がみんな優しいということ。
大地やミントの他にも、用意された道を進むのではなく、自ら選んだ道を進みたいと願う財閥の御曹司、翼くん。そんな翼くんの理解者で兄のような存在の執事、悠太さんなど。
立場も考え方は皆違いますが、それぞれに大事な人や大切にしている思いがあって。皆が皆、毎日を頑張って過ごしているように思えました。
【イマドキの魔法】は、そんな彼らを繋ぐための魔法。
バラバラの方向を向いている彼らがふとしたきっかけで一つになった時、世界は少し輝く。今までできなかった事ができる。
そんな人と人との繋がりの尊さを感じさせる、暖かな物語です。
あ、あと翼くんが愛猫の、シフォンとショコラをかわいがるシーンが好きです。
翼くんは普段、ツンとした態度を取ることも多いのですが、猫達のことを愛している気持ちが、よーく伝わってきます。
言いたいことがなかなか言えない、少し大人しめの少年、大地。そんな彼の誕生日に、洋菓子屋、来夢はオープンしました。
しかしこの来夢、実はただの洋菓子屋ではありません。なんと店長のミントさん、実は別の世界から来た魔法使い。それも、相当に強い力を持っています。
そんなミントさんに頼まれ、大地はウサギのモカを預かることになるのですが、実はモカもただのウサギではなく、魔法で化けたミントさんの子供。大地と一緒にいることで、良い影響を受けると思ったミントさん。こうして、大地とミントの不思議な共同生活が始まります。
別の世界だったり、ウサギに化ける男の子だったりと、不思議で素敵な魔法に溢れるお話。だけど中でも一番の魔法は、ミントさんの語るイマドキの魔法です。
今をドキドキすることで、何かを変えていける。そんなイマドキの魔法を使うのに、ドキドキすることに、不思議な力なんていりません。誰もが使えるはずの、素敵な魔法なのです。
大地もいつか、イマドキの魔法を使えるようになるのか。そしてその魔法は、彼とその周りに、どんな変化を与えてくれるのでしょう。
みなさんは魔法って信じますか?
どこかに魔法の世界があって彼らの不思議な日常とわたしたちの日常はひっそり繋がっていて。
もし、魔法使いの素敵なお菓子屋さんがあったなら、夢を届ける素敵な店があったなら。一度は訪れたい素敵な夢のお店。それが『来夢』です。
ある日、魔法の不思議に触れて主人公大地君の日常は優しく、変化していきます。
知らないものを知っていく喜び、傷ついたものを救うこと。
いたわりと切なる願いの世界で繰り広げられるストーリーは鬱屈しそうになる誰もに優しき希望の光をもたらします。
わたしは読みながら、刺々しい心がゆっくりと癒されていくのを感じていました。
毎日がつまらないなんてことは言わずにこの作品を読んでみてください。
明日もこの世界で頑張ろうって思えますから。
たくさんの希望と想いが込められたとても素敵な作品です。