第2話 頑張るお前は愛おしい!

誰も居なくなったオフィスで1人パソコンにむかってる彼女のほっぺに大好きな冷たいカフェオレをくっつけた!


「ほい!」

「ひゃ!」

「またまたおつかれー!」

「なんで?さっき帰ったんじゃ…。」


俺が帰ったと思ってた彼女はかなり驚いてたが俺は帰る気なんてさらさらなかったけどな…。お前を1人にできるわけないだろ!


「お前なぁ…これ全部1人でって…どんだけ時間かかるんだよ!はい、そこ代わって!」

と強引に席を代わらせた。彼女は戸惑いつつも隣の席に座る。


「お前はそれ飲んで休んでろ!休めたらその書類を確認して俺に渡せ!打ち込みは俺がやる!」


「ちょっと…そんなこと…。」

彼女はちょっと動揺するがパソコンにむかってすでに打ち込んでいる俺の姿をみてか観念したようだった…。


「忘れたの?俺にキーボード打たせたら右にでるものいないよ!」


そう、俺は毎年社内で行われるキーボード早打ちコンテストで毎年優勝している!

ゲーム好きも項をそうしてか得意なのだ!


「でもほんとに甘えていいの?」

と申し訳なさそうな顔して上目づかいで見つめてきた。


あれ?俺今なんかグッ!ときた?


こいつこんなだったか?

いつもはけっこう上から目線だったりする…

俺には…。


「まかせろ!」

「うん…まかせる…」

といい彼女は俺の差し入れのカフェオレを飲み干し書類に目を通し始めた…。



それからどのくらいたったか…

周りはすっかり暗くなり時計をみると夜の9時をまわっていた…。


あと少しで終わろうかという時、彼女が言った…。

「ねぇ、なんで戻ってきてくれたの?」

「はぁ?あたりまえだろ!これ全部1人でできるわけねぇだろが…。」

「うん、そだね…。」

とちょっと嬉しそうにほほえむ。


「お前の上司もつれないなぁ…こんだけの量をお前1人に押しつけるなんて…。」

とつい嫌みを交えて言ってしまった…。


俺はわかってる…

お前がいつも1人で何でもやろうと頑張っているのを…

弱みを見せるのが嫌で周りに頼れない性格を…


「よし!できた!」

彼女もホッとした表情を見せた…。


俺たちは2人して喜んだが…と同時に椅子にもたれこんだ…。


「はぁー!久々にやり遂げた感あるな!」

「そう?私はまだまだ大丈夫だけど!」

「うそつけ!」

彼女のこめかみをそっとこついた…。

彼女は苦笑いをした…。


「でも助かった…ありがとう…。」

と真面目な顔でいった…。


「お前なぁ…できねぇならちゃんと言え!俺にもっと頼ってこい!いいな…」

「うん…なんか今日優しいね…。」

「いつも!の間違いだろ?でもお前ほんと頑張りすぎ…ちょっとセーブしろ…心配だ…」


といい俺は彼女を真剣に見つめていた…


その時…

「グル…グルグルグルグル…。」

あきらかに彼女のお腹の音!



「ごめん…ホッとしたらおなかが鳴っちゃって…。」とお腹を押さえている。


「おまえなぁ…。」


彼女は顔を真っ赤にしている。


またかわいい!!と思ってしまった…。

なんだ?今までなかったことだ…。


「ほら!」とおにぎりとお茶を差し出した。

「えっ!なんで?」

「こんなことだろうとコンビニで買っといた。食おうぜ!」


2人でおにぎりを食べながら…


「あんたはなんでも完璧なんだね…。」

とぽつりとつぶやいた…。

「んっ?」


「私はだめ…全然だめ…今日だって結局あんたの力をかりちゃった…。」

「でもちゃんと終わったろ?」


「私…指導担当…外してもらおうと思う…教え方か言い方が悪いのか…成果がみられないんだよね…新人のあの子だってもう嫌なんじゃないかな…。」


俺は黙って聞いていた…


「そんなことあの子に言えんの?やってて思ったんだけど、これだけの量ちゃんとやってくるって…お前に言われてお前の期待に応えようとしてるからじゃねえの?気持ち的にはちゃんとやれる子なんだろ?」


「うん…。」


「なら、お前の指導はまちがってねえよ!あとは慣れだな…自信もて!お前は頑張ってる!俺が保証する!」

といいながらあたまをポンポンとしてる俺って…。


「うっ、うっ、うわーん…うわーん…ひっく…ひっく…」

彼女は声をあげ両手で顔をおおって泣く…。


「わわ!どした?」


「だって…最近…ほめられることなんてないじゃない?あんたにほめられるのが実は1番うれしかったりするんだよね…ばかぁ!」


泣いてる彼女には悪かったが、その姿がなんとも可愛く…愛しく…思えてしまい気がつくと俺の顔からは笑みがこぼれていた…。

これはこいつのことを知ってる俺だけの特権だろうな!


まだ泣いている彼女が

「ねぇ…1つだけお願いしていい?」

「言えよ…なんでもきくぞ!」

「今だけ…あんたの胸で泣いていい?」

「えっ!俺の胸で?」


こいつがこんなこと言うとは思わなかったのでしばらく俺は固まったが…


立ちあがり…両手を広げて…


「じゃあ!こいよ!」

彼女は迷わず俺の胸に飛び込んできて…そして思いっきり泣いた!


肩をひくつかせ泣くこいつがえらく小さく見えた…

そして俺は小刻みに震える彼女の体を両手でしっかりと抱きしめた…。




彼女がようやく顔をあげた。


「ありがとう…すっきりした!」

と彼女の顔は泣きはらした目に化粧はくずれてはいたがすっきりした表情になっていた。


「あっ!ごめん…」

彼女は焦った様子…


みると俺のYシャツは彼女の涙と化粧でズグズグになっていた…。


「いいよ!帰って洗えばすむし…。」


「だめよ!私の家あんたより近いし今から来て!すぐに洗って乾燥機にかければ大丈夫!化粧や口紅はなかなか落ちないんだから…」


「おい!それ本気で言ってる?お前女だぞ!しかもこんな時間に男を簡単に部屋にあげんな!」


考えなしにいった彼女の言動がなんとも腹立だしかった俺はつい声を荒げてしまった…。


彼女は驚いた様子でまた目に涙をためていた…たぶんさっき泣いてたぶん、涙腺がゆるんでいるのだろう…。

「ご、ごめん…。」


「あっ、いや…悪い…。」


「あんただったからつい…次から気をつける。でも私の全部を知ってくれてるあんたならちょっといいかなって本気で思った…。」


といいながら彼女の目から涙が溢れた…


「おまえな…マジで可愛いこと言うなよ!」

俺は彼女をもう1度自分の胸に抱きよせた…


「今日はよく泣く日だな…。」

「あんたのせいでしょ!」

「よくゆうよ!お前との飲みがまさか残業になるなんてな…」

「もう!残業代はちゃんと渡すわよ!」


「もうもらったから許す!」

「えっ?」


「お前の涙だよ…これより勝るもんなんてないからな!」


そして俺たちは自然に唇を重ねていた…


俺は涙で濡れたシャツの冷たさが彼女の体温のぬくもりにかわっていくのを感じていた…










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残業のお返しはお前の涙で 水天使かくと @sabosuke

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