第4話 明日への道。

 22になって、私の心の変化はない。

 傘火さんや諏訪部さんの尽力もあり、今まで生きてこられた。

 それだけでも十分だった。でも、少し余裕ができたのか、軽口をたたける仲にはなった。

「諏訪部さん。今回の歌詞はしっとりしているね。珍しい」

「それ外注だよ。確かコンフォートコーポレーションと呼ばれる会社だったかな? 信頼できるいい会社だよ」

「へぇ~。面白い会社だね。作詞作曲を行っているの?」

「そうみたいだね。そうだ。その外注さんから今度飲みにでも、と誘いが来ていたな」

「いいんじゃないかな。これからお仕事をする仲だし」

「それもそうか。これからの信頼関係を作るのはいいことだな」

「それに、もしかしたら……」

 この譜面、歌詞には見覚えがある。


※※※


 二日後のコンフォートコーポレーションとの飲み会が開かれ、諏訪部さん、マリサさん、私と、続いて自己紹介をする。

 と、目の前のコンフィートの中に見覚えのある顔を見つけた。

「角田くん!?」

「やあ。保坂。久しぶりだね」

「角田くん、やっぱり君が書いた歌詞だったんだね」

「そりゃそうさ。俺も一緒に書くと決めたんだからね。それにこうして出会えた。また曲を作るよ。保坂には頑張ってもらいたいな」

「うん。私たちの夢だもの」

「おやおや、わたしたちはお邪魔なようですな」

 と、瀬野さんがクスリと笑う。

「ははは。続けたまえ。知り合いがいるなら、教えてくれて良かったのに。水くさい」

「とりあえず連絡先の交換だな。これからも親しくしてくれよ」

 ナイス! 諏訪部さん! いいこと言った。

「じゃあ、連絡先を交換しよっか? 保坂」

「うん。そうだね。これからもよろしくね」

 連絡先を交換すると、最後まで飲み会を楽しんだ。


 酔いも回った頃、私は帰路につく。

「ちょっと、飲み過ぎだな。保坂」

「じぇんじぇん。まだまだ飲めるよ!」

「全く、せっかく会えたというのに、こんなになって。家はどこだ?」

「あっち」

 指さしで示す私。

 まっすぐに歩けない私を支えてくれる角田くん。やっぱり優しい。

「ほら、家の前だよ。帰って眠って」

「うん。ありがと。これ合鍵」

「え。あ、うん……?」

「大好き」

「……俺もお前が好きだよ」

「だから帰らないで」

「え。一緒に住むの!」

 酔っ払っているせいか、まともな思考ができていない。

 また出会えた喜びか、成人しての余裕か。


※※※


 とにもかくにも二人は巡り会えた。

 もうこの二人の仲を引き裂くものはない。

 これから数日後、彼らは結婚をした。

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音楽は心とともに……。 夕日ゆうや @PT03wing

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