転職した場所が静かだった件
バブみ道日丿宮組
お題:希望の転職 制限時間:15分
転職した場所が静かだった件
「おはようございます」
入社して声をかける。
けれど、返ってくる声はない。
「……おはよう」
声が静かに聞こえた。先輩の席からだった。
自分の席まで移動して再度挨拶。
「おはようございます」
「……2回言わなくていい」
ぼつりと反応。
「でも、挨拶は大切だって新人の頃から叩き込まれてますので」
「うちはそういう体育会系の会社じゃない」
確かに前の会社と違って服装は自由だし、11時までにくればいいというくらい優しい会社だ。
転職前がいかに忙しかったのかがよくわかる状況だ。ちなみに社員が全員揃うのは昼過ぎだ。だいたい皆遅刻してくる。そこに文句を言う人はいない。
その日の仕事をきっちりと定時までに皆片付けるからだ。
それはそうとしてーー、
「挨拶あったほうが気分よくないですか?」
「……私はそう思わない」
『はい』と手渡されたのはUSBメモリ。
「……そこに今日やること全部入れたから、わからなくなったなら聞いて」
『それじゃあ』と先輩はヘッドホンを耳に当てて自分の世界へと入ってった。
「わかりました」
パソコンを起動して、俺は室内に設置してある無料の自販機へと向かった。
「……」
ラインナップが一週間ごとに変わるここの自販機は新作を選ぶ楽しみがあった。
今日はエナジードリンクにした。
まぁ……毎日エナジードリンクなんだけど。
自席に戻ると、パソコンは起動してた。
先輩からもらったUSBメモリを指すと、すぐにフォルダが表示される。
中身は至って簡単に思える作業が多かった。
作品のレビュー、作品の動作確認、支給品の安全調査、社内改善案などなど。
中には仕事なのかわからないものもあったが先輩からもらった仕事に不満はなかったので一つ一つファイルを開き、完了させてく。
だいたい半分ぐらい終わると、昼過ぎだった。
「……」
先輩はまだ仕事してた。
昼休みは自由にとっていいことになってるから、仕事を優先して時間を使ってもいい。とはいっても、日常サイクルを変えるわけにもいかない。
先輩は先輩、俺は俺だ。
「休憩取りますね」
「……どうぞ」
ヘッドホンつけた状態でよく聞こえるものだと思いつつ、席を立つ。
圧迫されない日々はとても心地よかった。前の会社はギスギスしててとてもじゃないが楽しいなんていえない。仕事に面白さを求めるのは半人前のことかもしれない。
だが、集中力はダンチで違う。
ギュウギュウ詰めされた毎日と、開放された毎日では、休まるものも休まらないしね。
転職した場所が静かだった件 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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