帰省するということ
バブみ道日丿宮組
お題:めっちゃ故郷 制限時間:15分
帰省するということ
「……んっ」
喉にくる寒さを感じると故郷に帰ってきたと感じる。他の地方の寒気を体験してても故郷はぜんぜん違う。
「寒い?」
「ん、わかんない!」
「そう」
今年は子どもと2人での帰還だ。
引取人のはずの友だちは仕事で年末が終わるらしい。
そのために預かったかつての孤児がこの娘。
とてもいいことで、利口なので世話が簡単。
「お母さんもこれたら良かったのにね」
友だちは故郷が大好きだった。春夏秋冬と4回も帰省してる。私は年に1回帰るかもわからない日常なので不思議しかない。
今年は子どもがいるので帰ってみようと思っただけで、理由は他にない。
「雪!」
「そうだね」
子どもは無邪気でいい。
大人みたいに汚れてない。
でも……いつかはそうなってしまうのだと思うと少し残念。
「お母さんどうしたの?」
「なんでもないよ」
お母さん呼びされる娘を母が見たらどう思うだろうか。
『3歳になるまで隠してた!?』のと罵声を浴びせられるかもしれない。
事前に言っておけばよいだけの話ではあるけど、事情が事情だ。
孤児を引き取るといえば、きっと反対されてた……と思う。
自分の生活習慣でさえ怪しい人間に育児なんて無理だろうと言われるかもしれない。
それでも……それでも、この娘は私たちの子どもなんだ。
「もうちょっとでつくからね」
「うん!」
握り返された手は温かい。
生きてる証がここにはある。
「おばあちゃん元気かな?」
電話の内容を覚えてたのか、娘はそう聞いてきた。
「元気だと思うよ」
私は素直に応えて、頭を撫でる。
「ちょっと待ってね」
そうして友だちに到着の連絡をしてないことに気づき、スマホを取り出す。
寒い中スマホを操作するのは大変だったけど、一文だけ簡単に打ち込み送信した。
すぐに反応が返ってきたので、あっけにとられたけど、友だちはいつもこんなだ。
どこにいても私を思ってくれる、大事な友だち。
親友なんて言葉が当てはまらない友だちなのだ。
「さぁいこっか」
帰省するということ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます