体感型・硬派なファンタジー

これは身分や種族の異なる5人の旅の物語であり、それぞれの戦いを描いた群像劇である。

綿密に練られた世界観を軽快でわかりやすい文体で語っており、非常に読みやすい。
5人の旅人のそれぞれの魅力と微妙な関係性、彼らが次第に仲間になっていく様子を、自分も6人目の仲間であるかのような臨場感を持って観察する事ができる。

それだけにこの物語の結末にはビターな喪失感を禁じ得ない。
個人的には、ハッピーエンドであると思う。だが仲間と過ごした時間が楽しかったからなのか、作者の筆致により惹き込まれたこの世界にもう少しだけ留まりたいと願ってしまうからなのか、旅の終わりに男が見上げた空には切なさの色を感じずにはいられない。

敵の魅力も十二分で戦闘描写も非常に納得感があり、戦記としての読み応えも充分。