隔離部屋の人

バブみ道日丿宮組

お題:誰かの天井 制限時間:15分

隔離部屋の人

「おや? 新入りかい?」

「そうなんです。よろしくおねがいします」

「あぁよろしく頼むよ。この牢屋である部屋は1人で住むには広すぎてね。君は炊事全般ができたりするかい?」

「はい、家のことは一通りやってましたので」

「なるほど。だったら、ここでもやって欲しいのだが構わないか?」

「えぇ、別に構いません。その代わりここのことを教えて下さい」

「そうだね。公平な取引といこうか。まずここは知ってると思うが刑務所の1つだ。ただ事件を起こしたという極悪人が入ることはない。どちらかといえば、危険人物と判断されたものが隔離された施設だ」

「ということはあなたは危険ということでしょうか」

「そうだね。子供の頃から火遊びが趣味でね。小学校に入る頃には爆弾を作れるまでになってたよ」

「なるほど、危険ですね」

「あぁ、そうさ。それで犯罪をしたわけでもない人物に不当な差別的取扱いをすることはできない。そのため、衣食住が完璧にある場所を提供されるわけだ。ゲーム遊び放題、テレビ見放題、インターネットやり放題、食べ放題ってね。やりたいことができる場所だよ。まぁやりたいことの幅には制限があるが……」

「僕たちにそれだけの価値があるんでしょうか?」

「君がなんの理由で拘束されたかはいつか聞くとして、私はほら火というか陽の扱いがうまかったからね。上を見たまえ。この天井に張り巡らせたタイルは熱を帯びると電気発生させるんだ。もちろん感電することがない特別な電気だ。建前上電気と言ってる」

「それが全面にあるということはそういう発電所のようなものが部屋にあるってことですか?」

「そうさ。そのおかげで国は少しずつ発電所を撤去し始めた。効率がよくクリーンな発電所があるならば、労力がかかるものはあってももったいないからね。それでわかったかもしれないが、こうやって私は国へ貢献してるんだ。それが価値というやつだと思う」

「歴史的な研究者じゃないですか」

「でも、称賛はされないんだ。この技術を発表したのは一般的な電気メーカーであって、私じゃない。知らない誰かの天井といってもいいね」

「悔しくないんですか?」

「少しもその気がないといえば嘘になるね。でも、こうしてこの場所にいさせてくれるのであれば文句は言えないかな。外はいろいろあれだっただろう?」

「はい、泥のような人ばかりいました」

「なかなか君は言うようだね。これからの生活は楽しめそうだ。他の説明はおいおいにしておこう。全部話したとしても頭に残らないのであれば意味がないからね」

「そうですね。まだ驚きのほうが強いです」

「では、この部屋の説明をしよう。やりたいことができるってことを示さないと嘘つきになってしまうからね」

「はい、お願いします。」

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隔離部屋の人 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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