つれてかれた彼女、そしてあいつ
バブみ道日丿宮組
お題:許せないぬくもり 制限時間:15分
つれてかれた彼女、そしてあいつ
「大丈夫だから……気にしないで」
頭から血を流し、目を閉じた彼女はそうつぶやいた。
「すぐ病院に連絡をする」
ポケットに手をつっこみスマホを取ろうとした手は彼女に掴まれた。
「はやくここから逃げて……まだ彼女はいるから」
顔を上げ、周囲に目を配る。目に入ったのは薄れた廃ビルの柱ぐらいで人らしい気配は見つからない。
「彼女はあなただけを求めてる。私がいたから、彼女は私をなきものにしよう……っ」
言いながら彼女は口から血を吐いた。
彼女の身体は切り傷、殴打による腫れ、なにかに細いものによる刺傷があって、どれがどれほどのダメージを与えるのかわからない。
彼女の足元に流れてる血は予想以上に少ない。映画やらドラマやゲームでみるような絶命的な血溜まりはできてない。
「僕がここにきたってことはわかってるから、これをきっと見せたかったんだと思う」
優しく彼女を抱きしめた。
僕は、僕だけは彼女の味方だ。
学校でいいきになって僕の隣に立とうとしてるあいつとは違う。まさかこんな事件を起こすなんてほんと許せない。
彼女の温もりと頬すりで僕は元気を再チャージした。
「あいつは頭はどうにかしてる。自分がみんなに愛されてると勘違いしてる」
学校の連中は楽しがって、あいつをお姫様にしてるが決してそういった能力がある人間ではない。僕からしてみれば、単なるお笑い芸人。そういうキャラクターなのだ。
それぐらいあいつは普段から頭のネジが吹っ飛んでる。
今回のだってそうだ。
『誕生日プレゼントはあなたに不必要な子猫ちゃんの処分として』と縛り上げた彼女の写真を送りつけてきた。それから暴行に走っただろ。
僕が現場にくるには時間が経ちすぎてた。もうダメなんじゃないかと困惑もした。
けれど、彼女は生きててくれた。どこも想像以上にひどくなってなかった。
「ここを出よう」
そうして、僕たちは廃ビルから出ようとしたところで、熱い液体をあびた。
赤い、赤い、生臭いものが空から降ってきた。
つれてかれた彼女、そしてあいつ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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