エピローグ





 後日、地元新聞の地域面に今回の騒動の記事が載った。




『小さな町のホヌ』




 彼は過去に繁栄した海水浴場でライフセーバーとして美しい海を守っていた。


 しかし、優秀な彼でさえ防ぎようのない水難事故は後を絶たず、次第に海水浴客は減っていった。


 その中でも、彼の心に悔いの残る事故が10年前に起こりました。


 彼が急用で仕事に出られなかったその日、彼の替わりに仕事を引き受けた新人のライフセーバーが居ました。


 青年は正義感の強い人で、ベテランの彼の替わりという事で、何かあってはいけないと細心の注意を払っていました。


 しかし、海水浴客の当時中学生だった少年が、離岸流にさらわれ沖へと流されてしまい、少年を助けるべく、青年が救助に向かったが、高波の襲われ二人は帰らぬ人となってしまいました。


 その一件で彼は自らを責めセーバーの仕事から退きました。


 この町の海水浴場を守っていた彼を失ったことで、町は海水浴場を閉鎖することを決めました。




 しかし、皮肉なもので秘境は夜な夜な人を惹きつけ、海の中へと人を誘い込み事故を起こし続けた。


 いつしか人々は『呪われた海』と呼ぶようになった。


 そんな海を守ろうと彼はひとり、夜のパトロールを続け、そして溺れる人たちを幾度となく救ってきた。


 そして今年限りで、この砂浜は無くなってしまいます。


 私たち、海の守り神ホヌの住処も、失われてしまうのです。

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小さな町のホヌ 月野夜 @tsukino_yoru

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