二人のとき
バブみ道日丿宮組
お題:思い出の耳 制限時間:15分
二人のとき
「あなたの耳って昔から何も変わってないのね」
「突然なにをいってるんだろうか、この幼馴染は」
「えーとね、ほら体の部位って大人になるにつれて成長するじゃない?」
「それはまるで耳だけが僕が成長してないみたいじゃないか! そんなことないからちゃんと見て!」
「うーん、でも……昔見た時と比べて変わってない気がするわ」
「そ・れ・は・ね、君が子どもの頃に見たからそう見えただけで、君が成長するのと同時に僕の身体も成長してるんだからね」
「不思議ね。だってあなたの耳よ?」
「その誤解を招くような言い方は困るね。僕は至って普通の人間だよ。だいたい誰が好き好んで多種族になりたいと思うのだろうか。というより、この世界には人間は人間しかいないから!」
「まぁそうなるわね。不本意ながらですけど」
「僕に疑問を持つのはいつものことだからいいけどさ、いい加減僕との距離を考えたほうがいいよ。フィアンセだっているんだし」
「あなたも私に嫁ぐのだから関係ないわ」
「……えっ? 初耳なんだけど?」
「いつもあなたに言ってるじゃない。いつでも一緒にいるって。ちゃんとお父様にも許可を頂いてるし、フィアンセにも承諾済みよ」
「それは言葉が違うんじゃないかな? いつでも『友だち』としているって普通思わない?」
「そうは思わないわ。だって、あなたがいるのが私の普通なのですから」
「はぁ……知らないのは本人だけってか」
「そうね。おばさま、いいえお義母様は既に知ってるわ。もう3年も前に決まったことよ」
「長っ……!? 時々愛くるしいものを見るような目を母がしてたのはそれが原因か! 娘が欲しい、欲しいって最近聞かないのもそういうことか!」
「よかったじゃない。お義母様もきっと満足してると思うわ」
「腑に落ちない結果だ……」
「もしかして私のこと嫌い?」
「いや……」
「それとも大好き?」
「……なんで嫌いの反対が大好きになるかはともかくとして……嫌いじゃないよ」
「良かった。あなたの耳をいつまでも見ていたいもの。ずっと側にいてね」
「なんか……耳だけしか好かれてないような気がするんだけど?」
「そんなことないわ。愛だけでいえば、あなたはフィアンセよりも好き。そう、大好きだわ」
「ふーん、そっか。そうなんだ」
「ふふ、赤くなっちゃってかわいい。耳もやっぱり赤くなるのね」
「うるさいなぁ、もう。ほら、帰るよ。今日は迎えの車がこないんでしょ」
「そうよ。たまには歩かないとすぐにダメになってしまうもの」
「注目を浴びるのはあまり好きじゃないんだけど、まぁいいけどさ」
「そうよ、慣れて頂戴。そして耳を触らせて」
「何がそんな楽しいんだよ。人の耳なんてただの補聴器みたいなものなのに」
「いいのよ。あなたのだからいいの」
「そっか」
二人のとき バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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