心に残る一撃

バブみ道日丿宮組

お題:穢された「うりゃぁ!」 制限時間:15分

心に残る一撃

 僕が殴られたという事実は変わらない。

「いつまで不貞腐れるの? いい加減にしてよ」

「……殴ったほうがそれいう? むしろ、僕のほうがいい加減にしてほしいよ」

 ため息とともに睨みをきかす。

「な、なによ、あんたなんてあたしがいなきゃ誰も近寄らないんだからね!」

「そうだね、僕はいつだって1人だよ」

 これもまた事実だ。僕には友だちと呼べるものはいない。

 しいていえば、彼女が僕の側にいてくれてる。トイレにも付き合ってくれる。そんな彼女が僕を殴りつけるなんてショックでしかなかった。

「悪かったって言ってるでしょ。あのときは……ほら、先輩がいたからさ」

 確かに先輩はいた。

 相変わらず憎たらしい顔でふんぞり返ってた。あんなのが学校をしきるメンバーにいるなんて愚かでしかない。はやく卒業してほしいものだが、卒業できてない。聞いた話だが、もう8年も高校3年生を繰り返してるらしい。

「先輩がいたら、やらなきゃいけないでしょ」

「……先輩のいうことなら何でも聞くのか?」

「そ、そんなことないわ! やりたくないことはしないの」

 じゃぁ、僕を殴りつけたのはやりたかったことなのだろうか。

 はぁ……嫌だな。どんどん彼女の嫌な部分が大きくなってる。

「さっきと言ってることが違う。やらなきゃいけないんでしょ? なら、僕を殴ったのもやらなきゃいけなかったことってことでしょ」

 馬鹿らしい。

 彼女だけはと思ってたのに……この有様だ。

「わかったわ。わかった」

「なに?」

 立ち去ろうとした僕の制服の裾を彼女は掴んでた。

「あたしを殴って」

「は? ドMなの?」

 違うわと頬を赤く染める彼女。

「殴ったのがいけないことなのはわかってる。それでも選んでしまったのはあたし。なら、あんたがあたしを殴ればいいってことでしょ」

 そういうものなのだろうか。

 それが本当に正しいのであれば、殺し殺される関係は永遠に終わらない。最終的には誰か1人が残ってしまう。

「ほら、はやくしなさい」

「……ほんとにいいの?」

 えぇと彼女は目を閉じて、ぷるぷると震えた。

 こんな状態で僕は本当に彼女を殴っていいのだろうか。

「殴るなんて嫌だね。僕は先輩みたいになりたかない」

 そういって僕は彼女のほっぺたをつまむ

「にゃにすりゅのよ」

「これでチャラだよ、うりゃぁ」

 思いっきりひっぱって、離した。

「痛いじゃない! なにするのよ!」

「殴られるよりはいいだろう?」

「違う、違う! あたしは殴られられないといけないの!」

 知ったことじゃないと、僕を今度こそその場を離れた。

 が、夜にまさか仕返しにくるだなんて考えもしなかった。

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心に残る一撃 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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