野蛮人

バブみ道日丿宮組

お題:疲れた霧雨 制限時間:15分

野蛮人

 濡れた穴に濡れた棒を突っ込むのはとても勇気がいることだ。産まれた時には機能してないその部分は成長とともに野蛮な怪獣となる。それは性別が異なっても同じで、弱いものは強いものに食われる。

 私が今こうして生きてるのは、そんな世界だからだ。

「……はぁ」

 山道を降りてきたから、だいぶ疲れてた。雨も霧雨だが振り始めてた。

 そういうこともあって、山の麓にある無人のバス停で休憩することにした。あまりにも疲れてたせいか、うとうとと睡魔が襲ってきた。少しだけなら大丈夫かと背をベンチに預ける。

 それから、数分後……私は吐息を荒げながら、床に倒れてた。

 奥底にあるのは温かいもの。

 私は野蛮な人に襲われたのだった。5人ほどの集団だった。服を着ず、生まれた姿やることをやってそのまま帰ってた。悲鳴をあげることもできなかった。

 できたのは、荒げる呼吸を作ること。野蛮に屈しないこと。それは帰って野蛮に欲望を抱かせることになったのだけれど、そうする以外に選択肢はなかった。

「……」

 こんな状態に陥っても、悔しくはなかった。

 私が弱いだけなのだ。強かった父たちとは違う。

 あのまま成長していれば、おそらく私も強い人間の一人になれただろう。それなりの教育、それなりの知人、それなりの金品が家には財産として存在してた。それを利用すれば、間違いなく成功も、名誉も、地位も手に入れられた。

 けれども、それらは私の力で勝ち取ったものじゃない。

「……っ」

 違う悔しさが生まれた。開放感もあった。

 こうして外で全裸でいるということはほとんどない。

 子供のときであっても無邪気に全裸で遊ぶということはほとんどなかった。

「……」

 友だちがいれば、もしかしたら助けてくれたかもしれない。いや……5人にかなう人間なんているだろうか……うーん。父ならできるか。

 やはり……私が弱いだけなのだ。

 寝ていても精神を保つ、寝ていても武術を放つ、寝ていても、走り出す。

 それくらいはやってのけないと、この世界ではただ奪われるだけだ。

「……」

 散らかされた服と、下着を手に取り、雨にさらし汚れを落とした。もともと濡れてたものだ、今更ずぶ濡れになったとしても問題はないし、酷い匂いを少しでも取りたかった。

「あぁ……」

 全身を雨にさらすと気持ちよかった。

 他にも野蛮がいないとも限らないのに、のんきだ。

 でも、先程の行為に比べたらだいぶいいものだ。


 そして私は服で身体を拭き取って、それを絞り着て、街へと向かった。

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野蛮人 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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